「っ、 う、」
「 あ、ッ!動いちゃだめだぞ!」
「 え、?」
ルフィを助けないと、そう思って動かない身体を無理矢理動かそうと起こそうとすれば、側から聞こえてきたのは船医であるチョッパーの声だった。海軍に捕まっていた筈の俺が、何故チョッパーの声を聞けるのだろう、そんな疑問が脳内を駆け巡ってようやく、あの後でルフィがあの場所から俺を助け出してくれた事を思い出す事が出来た。ルフィに助けられた、その事実が俺の意識の中に入ってきていたそんな時、また唐突に、俺の身体に大きな衝撃が襲ってきた。
「っ!!」
「 あ、ルフィ!駄目だぞ、は怪我してんだから、そっとさせて置かないと!!」
「 ルフィ?」
体中を走ったその痛みに、思わず声になっていない声を上げてしまいながら、敏感になってしまっている俺の皮膚に別の何かが触れているのを同時に感じ取った。そして聞こえてきたチョッパーのその声に、そう感じさせているのがルフィだという事が分かって、俺はすぐにでも声を上げようとした。迷惑をかけてすまない、怪我はしてないか、助けてくれてありがとう・・・言いたい事は山ほどあるはずなのに、けれど何故か、俺の喉は、唇は、言葉を紡ぎ出す事ができなくて。
「 、俺、お前が好きだ。」
「・・・ル、フィ?」
突然紡がれた、その言葉。全てを抱き込まれているようなその抱擁の所為か、俺の喉は彼の名前を声として震わせる事しかできなかった。そして俺の脳すらも、その言葉を響かせる事しかできなくて。「好きなんだ、。」 それからまた同じように言葉が俺の中に木霊する。それと同時に、俺の中に響いてくる彼の言葉が、伝わってくる体温が、溢れんばかりの何かを俺の中から引き出してきて、無意識のうちに、俺は彼の背中へと腕を伸ばしていて、
「だからな、、」
「 ああ、」
「勝手にいなくなったりするな。」
「っ、 ああ、いなくならないから。 だから、」
「 ありがとう、ルフィ。」 肩口に埋められていたその顔が俺の目を捉えて、放たれたその言葉。それに対して俺は、彼の抱擁から来る安堵感からなのか、降ってくる愛おしさからなのか、何故だか無性に涙腺を緩めてしまいたい衝動に駆られてしまった。それを押さえるようにして、今度は俺が彼の首元に顔を埋めながら、漸く彼の名前以外の言葉を震わせる事ができて。背中に回した今は弱い力でしか握る事の出来ないその腕を、それでも必死に彼のその場所へと強く回して、
「 俺も愛してるよ、ルフィ。」
「にししっ!おォ! 無事で良かったな、!」
聞こえてきたその嬉しそうな声に、さらに強く抱きしめてくれたその腕に、皮膚から感じられるその体温に、俺はそれら全てを感じていたくて、ゆるゆると瞼を閉じて彼のその言葉にゆっくりと頷いた。
死線を潜り抜けて
痛みさえも忘れるその衝動を、彼は俺に与えてくれる。
title by 赤小灰蝶 / 死線を潜り抜けて