賞金首である、。麦わらの一味の1人であり、船長のモンキー・D・ルフィにこそ額は劣るものの、世界政府から注目されているルーキーの1人だ。そんなヤツが、何故こんな所で捕まっている?


「(  ま、聞いたって言ってくれる訳がないか。)」


自分で言うのもあれだが、俺が所轄しているこの一帯はそんなに強い賞金稼ぎがいるわけでも、悪党がいるわけでもなかった。俺としたら仕事が減る分有り難いんだが、とにかくこの街は平和そのものだった。・・・だから尚更、こんなルーキーが賞金首に連れられてくる日があるなんて思わなかった。けれど、目の前にいるのは、紛れもないあのであって。


「(・・・しかも、 えらいボロボロにされちゃって。)」


賞金首にやられたんだろう、目の前の男の身体は傷だらけだった。腹部を見たが青痣だらけでひどかったから、多分それで立つ事すらもできないんだろう。手錠をかけてねえってのに、逃げる気配が全くなかった。噂でしか聞いた事がなかったが、それでも結構な額の賞金首がこんなにまでやられるのか?しかも連れてきた奴等も威勢だけは良い阿呆にしか見えなかったが・・・何か弱みでも握られていたのだろうか。


「(・・・いや、弱みというよりは、人質か何かか。)」
「・・・良いのか、手錠もさせずに。」
「ん?  ああ、良いでしょ、別に。だって君、逃げられるような身体してないし。」
「・・・船の場所とか、聞かなくても良いのか?」
「聞いた所で教えてくれんの?」
「・・・いや、それは、死んでも言わないが。」
「だろうね。」


やっと喋ったこいつの言葉に、俺は肩をすくめながら返事をする。他の仲間の居場所なんて拷問したってこいつが吐くとは思えなかったし、そんなのは俺の趣味じゃないしね。「まあ他の一味の連中はほっとく事にするよ。」 なんてそう俺が紡ぎ出せば、無表情だった顔に途端にゆるゆると顔が緩み、そこに笑みが浮かべられた。そんな不意の出来事に、俺は思わず目を丸くしてしまう。


「(おーおー、愛されちゃって。)」


言葉の端々、それから今見たこいつの表情から、思わずそんな言葉が頭を過ぎる。声として出そうとも思ったが、そんな皮肉混じりの言葉にさえ、こいつは普通に何の躊躇いもなく頷いちまう事が予想できて、すぐに開きかけていた口を閉じた。



「  さて、と(そろそろ本部に連絡しますかね。)」


こいつを閉じこめておかずに俺の部屋へと連れてこさせたのは、単に麦わら一味であるこいつに興味があったからだ。海賊なんざどれもこれも同じだと思っているが、この一味は何故かその中でも異質な存在である気がした。それは今のこいつの言動からも感じ取れたし、たぶん他の一味の奴等もこいつと同じ考えなんだろう。少しだけの会話だったがそれで満足した俺は、電伝虫をとって本部に連絡しようとした、  そんな時、


「    んの、ヤローっ!!」
「   なっ!?」


ガシャーンッ!!と異常なまでに大きな音を立てて、俺の部屋の窓ガラスが壊れた。いきなり過ぎるその出来事に、俺は目ん玉をかっ開いてそちらへと焦点を合わす事しか出来ない。見るも無惨な跡形もないその窓へと意識を集中させていると、その窓へ、いや俺の部屋へと、徐々に気配が集まってくるのを瞬時に感じ取り、側に置いてあった俺の武器であるサーベルへと手伸ばした。それと同時に、窓のあった場所へと飛び込んできたのは、


ーッ!! あ、いた!!」
「   る、ルフィッ!!?」
「・・・って、事は、君があの麦わら君か。」


俺には目もくれず、すぐさまの方へと視線をやった麦わら。が逃げ出そうとしなかったのはこうなる事が分かっていたからかと一瞬思ったが、本人の驚きようからその考えをすぐに捨てる。どうやらこの一味の船長は、船員でさえも読めないような行動をする人物らしい。


「ったく、散々俺の部屋を荒らしてくれたな麦わら君。」
「ん??お前ェ誰だ?」
「俺は海軍本部の人間だよ。一応は君の敵さ。 さて、聞くまでもないけど、君はここに何しに来た?」


「返答次第では、俺も働かないといけなくなるんでね。」 答えなんて分かっていたが、一応彼にそう訊ねる。はりつめた緊張なんてまるで感じられないこいつが、本当にを助けに来たのかどうか少しばかり訊きたくなったからだ。

その間に、視線をずらしての方を見やると、麦わらがここに来た事に未だに驚いているんだろう、ボロボロに傷ついた顔は、その身体は、ピクリとも動かなかった。それ程予想外だったのか?そんなに仲間を愛しちゃってるのに? なんて思いながら、それからまた、麦わらの方へと視線を戻すと、  「 そんなの、決まってんじゃねェか。」


「 仲間を返してもらうためだっ!!」
「・・・あ、そう。だったら、俺はそれを阻止しなくていけないな。」


「君には悪いが、は渡さないよ。」 麦わらのその言葉を聞いて、俺はすばやくサーベルを構える。続けざまに言葉を吐き出して、俺を視界に入れながらも焦点をずっとへと合わせていた麦わらと、の間へと俺は身体を滑り込ませた。ようやく目がかち合った麦わらは、俺のそんな言葉に、  「やってみろよ、」


「俺は、お前なんかに絶対負けねェ。」


そう放ってきて、戦闘態勢へと入った麦わらのその顔に、ひどく自信に満ちた笑みが浮かべられるのを、俺はこの目に捉えたのだった。

揺るぎない決意

その瞳に、不覚にも俺はゾクリと身体を痺れさせてしまった。



title by 赤小灰蝶 / 揺るぎない決意