「 ・・・ルフィ?」
・・・けれど、俺の後ろで、俺の真反対を向いているはずの我らが船長は、どうやらその普通に当てはまってくれないらしくて、
「、すげー甘ェ匂いがするぞ?」
「香水はつけていないけど・・・いや、そういう事じゃなくて。」
「??何だ?」
いや、彼が普通なんて類に含まれない事ぐらい、重々承知である。・・・承知ではある、けれど、こんな時にまでその素晴らしいほどのマイペースさを貫かなくとも良いと思うのだが。彼に言った所で伝わらないだろうそんな言葉を俺は心の中だけで紡ぎ出した。「ははっ!敵に背中を見せるたァ、なってねェなっ!!」なんて周りから騒がしい程の声が聞こえるけれど、言われている本人は彼らすら眼中にないようで。
「やっぱり、甘ェ匂いがする。」
「・・・うーん、甘いと言ったら、さっきルフィと一緒に食べたデザートくらいだけど。」
「ん?・・・おおっ、あれか!!なーんか覚えのある匂いだと思ったんだよなァ!」 俺が返したその言葉に嬉しそうにそう言いながら、俺の背中に自分の背中・・・ではなくて、顔を押しつけてくるルフィ。
彼が一生懸命にその匂いに鼻を寄せているそんな今も、実は敵が武器を持ってこちらへと攻撃してきていたりするのだけれど。俺の方はまだ正面を向いているから問題ないとして、彼の背中はがら空きであるはずなのに、それでも彼の背中には誰1人として傷を付ける事ができていなかった。
「(・・・全く、野生の勘なのか、何なのか。)」
背中へと急襲してくる輩を、俺に抱きつきながらも器用になぎ倒していくルフィは、「俺、この匂い好きだなー。」 なんて、まるで犬のようにぐりぐりと顔を押しつけてきて、何とも心地よさそうな声を響かせながらそんな言葉を放ってきて。そんな彼の声を耳に、脳内に留めていると、ふと、ある事が思い浮かんできて。
「俺に匂いが移っているのなら、ルフィにも移ってるんじゃないのか?」
「んん?そうなのか?」
「試してみたらどうだい?」
不意に出て来たそんな考えに、ルフィは不思議そうにそう言いながらも俺の背中と自分の服を交互に試してみたらしい。正面を向いて残り少なくなった敵を、なるべく彼のひっついている背中を動かさないようにと努力をしながら、蹴り飛ばしているなか、「おォ!ほんとだ!同じ匂いがするぞっ!!」 なんてまたとても楽しそうで、嬉しそうな声が聞こえてきた。
「ふふ、それは良かった。 さて、片付いたか?」
「 にしし、っ!」
「ん?何だ、わっ、」
彼の声と同時くらいにようやく最後の1人を飛ばし終えた俺は、後ろからもその騒がしい声が聞こえないのを確認する。ひと息ついていた所に、俺を呼ぶ声が聞こえて、ようやく彼の方へと身体ごと向きを変えながら返事をすれば、それと一緒に少し大きな、けれど慣れ親しんでいるような、そんな衝撃が来て。
「 どうしたんだい、ルフィ?」
「やっぱ俺、こっちの匂いの方が好きだぞ!」
「??同じ匂いがするんだろう?」
ルフィの抱きしめられたそんな衝撃にそう言葉を返せば、それに対して紡がれた言葉は、少し俺には理解が出来ないそれであって。食べたものは同じであるのだから、匂いも同じはずなのに、どうして俺の方へ?そんな事を思いながらそう聞けば、疑問符を浮かべていた俺の背中へと腕を回していたルフィは、ひどく愛らしい笑みを浮かべながら
「だって、の匂いもするんだぞ!」
「だから、俺はこっちの方が良いんだ!」 嬉しそうにそんな事を放ったルフィは、そのまま俺の首元へと鼻を擦り寄せてきて。「しししっ、!」 なんてまた、愛しいその笑みで、愛しいその声で、俺の名前を呼んでくれるものだから、(ああ、もう、 敵わないな、全く。)
「 ふふ、なら、俺はそっちの匂いの方が好きだよ。」
「ん?何でだ?」
「甘い匂いと、君の匂いがするからね?」 顔の緩みがひどい事になっているのを感じながらも、それすら抑える事ができなくなった俺は、彼の背中に腕を伸ばして、その愛しくて甘い匂いがするその首元へと、そんな言葉を吐き出しながら、
君の香りに引き寄せられて
「にししっ!そっか!!」 なんてひどく嬉しそうに言う声が、耳へと響いてきて
title by 赤小灰蝶 / 君の香りに引き寄せられて