芝生の甲板にある木陰で何をするでもなくぼーっとしていたさん。たまにさんはそういう時間がある事を最近知った私は、そんなさんをちらりと見やった。すると、偶然にもさんの目も私の方を向いて視線が合って、「ヨホホ!どうしたんですか、さん?」 と私が声をかけると、彼は少し疲れているような笑みを浮かべて私にヴァイオリンを弾いて欲しいと喉を震わせた。
「ヨホホ!お安い御用ですよ!では、1曲。」
こう言われるのも初めてではなくて、さんはこうしてたまに私に1曲奏でて欲しいと言ってくれる時があるのです。もちろん、音楽家としてそれは嬉しいものですので、喜んでヴァイオリンを構えて音を奏でるのですが、さんがそう私に頼んでくる時はさん自身が数日間くらい眠れない日が続いている時が多いのです。その理由をさんは他の皆さんにも言った事はないらしいのですが、私もなぜなのかは知りません。けれど、さんが私の奏でる音で安らいでくれたらそれだけで嬉しいので、そんな事は気にしない事にしたのです、ヨホホ!
「 ふふ、 心地よい、」
奏でる間にそっと囁かれたそんな言葉。先程の笑みとは違って、穏やかなものになったそれを見て私もほっと安堵する。そういえば、最近チョッパーさんが「が薬はあまり使いたくないんだって言って睡眠薬を飲んでくれないんだよー、睡眠は大事なのにっ!!」 なんて困っていましたが、やっぱりさんは睡眠不足だったのでしょう、ゆったりとした曲を選んで奏でていれば、1曲弾き終わる頃にはさんは瞼を閉じて心地よさそうに眠ってしまった後だった。
「ー、ブルックー!! あ、ブルック見っけ!!」
「 あ、ルフィさん。さんもここにいますよ。眠ってしまいましたが。」
「なんだ、眠ってんのか?」
さんが風邪をひかないようにと毛布でも持ってこようかと思ったそんな矢先、大きな音を立てて開いた向かい側の男部屋から飛び出してきたのはルフィさんでして、どうやらさんと私を探していたらしく、木陰で気持ちよさそうに眠っていたさんを見ながら私はルフィさんにそう伝えた。
「寝てんのなら、遊べねェよなあ。」 さんの目の前にしゃがみ込んで残念そうにそう呟いたルフィさんは、何をするのかと思ったら、今度はさんの背中に腕を伸ばして抱きついてしまって。さんが起きるんじゃないだろうかと心配したのですが、私の心配とは反対に、さんは目を覚ますことなく、それどころか、ルフィさんが自分に身を寄せてきたのを感覚的に悟ったのか、ゆるりと笑みを浮かべて、ルフィさんの背中へと同じように手を伸ばして、
「 なあ、ブルック!俺にも弾いてくれよっ!!さっき、弾いてたやつ!」
「俺もと一緒に寝る!」 先程までの予定はどこへやら、どうやらルフィさんは遊ぶよりもさんとお昼寝することを選んだようで。さんが自分の背中に腕を伸ばしてくれたのを、とても嬉しそうにしながらさらに彼に身を寄せたルフィさんは、私を見上げてそう頼んできてくれまして。そしてもちろん、私はその頼まれ事を快く承知して、
「ヨホホ!承知しましたよ!!先程弾いた曲ですね!では、良い夢を見られることを願いまして、」
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1曲弾き終えた後、私は仲良く気持ち良く眠っているお二人に毛布をそっと掛ける。こうして音楽を聞いて安らいでくれたという事は私にとって非常に嬉しい事ですが、このお二人を見ているとその嬉しさと共に別の何か心地よい感覚が私の中を満たしていってくれるような気がして。
「 本当に不思議なお二人ですね。」
音楽と同じくらい、いやもっとそれ以上かも知れない、そんな力を彼ら持っているような気がしてならなくて。・・・そしてたぶん、そう思っているのは私だけじゃないのでしょう、この船に乗っている皆さんは、きっとこの力にいつの間にか引き込まれていっているから、こうして一緒に仲良く寝ていたり、ルフィさんに連れられているさんを見たりしても、仕方ない、なんて言いながら、笑みを浮かべてそれを眺めるのだと私は最近そう思うようになりました。
「 おやすみなさい、さん、ルフィさん。ディナーの時には起こしますので。」
さて、私はサンジさんのいるダイニングへと行ってティータイムにでもしようと思います。あ、そこでサンジさんに今思った事を訊いてみても良いかもしれませんね、ヨホホ!!
不確かな思いを持ち出して
・・・というわけでして。サンジさんはどう思います? いや、あいつらがいちゃこらしてる所なんざ面白くも何とも・・・って、・・・今も一緒に寝てんのかっ!!? ええ、それはもう気持ちよさそうにお互いに寄り添ってすやすやと。・・・って、どうしたんですか、サンジさん?
title by 赤小灰蝶 / 不確かな思いを持ち出して