「うん?どうしたルフィ?」
「 ヒマだ。」
「・・・まだ釣りを始めて1時間も経っていないが。」
麗らかな気候の中、読書をしていた俺に「っ、つり勝負をするぞ!」なんて言われて甲板へと連れていかれたのはほんの1時間前のことであって。彼のその楽しそうな笑みを見てしまえば、断るなんて事はもちろんできなかった訳で。そんな愛らしい彼の笑みに誘われるままに、釣り竿を持って釣りを開始したのだけれど、誘った張本人がどうやら飽きてしまったようで。
「だって釣れねェんだもんよォ、」
船縁の上に腰を下ろしてまだかまだかと構えていたその姿勢も今ではだらんと猫背になって、見つめる視線も浮きから何故か俺の方へと矛先が変わっていて。「あー釣れねェ!!」 なんて俺に返してきた言葉を再度叫ぶようにして言葉を放つ我らが船長さんは、猫背だったそれを今度は身体を反るような格好へと勢いよく変えて。
「 ルフィ、そんな勢いよく姿勢を変えると、」
「 うおっ!!」(ガンっ!!)
危ないぞ、 ルフィに視線を移してそう言おうとした矢先に、彼は甲板へと背中からそのままの勢いで落ちてしまった。まるで大きな魚を釣ったかのようなその動作に「いてて、」なんて声を漏らす彼に思わず笑みを零しながら手を差し出した。
「ふふ、言うのが少し遅かったな。ほら、手を貸して。」
「おう、ありがとな!!・・・あ、良いこと思いついた!!」
「ん?何か面白い釣りの方法でも、わっ、」
俺を誘いに来た時のようにその顔に楽しそうな笑みを浮かべるものだから、何だろうと思いながら伸びてきたその手を掴んで引き上げようとしたのだけれど、引っ張られる力が思いの外強くて。元々バランスをとりにくい場所に座っていたのも相俟って、俺はバランスを保つことができず、そのままルフィに覆い被さるように勢いよく彼の身体へダイブを決めてしまった。
「 ルフィ、」
「にしし!!」
しかしルフィは最初から俺を自分の方へと引き寄せるつもりで居たらしく、慌てて見上げてみればそこにあったのは先程と何ら変わらないその表情。離れようとする俺の身体を離さないと言わんばかりに背中に回している腕の力を強くするから、離れようにもできなかった。甲板にばらばらと落ちてしまった釣り竿をそのままに、ルフィは俺を自分の方へと引き寄せて首元へと首を埋めてきて。
「 釣りよりも、とこーしてる方がずっと楽しいっ!!」
「もそう思うだろ、な?な??」 ルフィの足と手で身動きも取れないような状態の俺に、ルフィは本当に楽しそうなその声で、俺にそんな言葉で訊ねてきて。そんな彼の言葉に頷かないなんてこと、もちろん俺には到底出来るはずもないのだ。結局のところ、俺が釣りをしている理由も、こうして彼の言葉に頷こうとしているのも、彼のその、愛しくて、引き込まれるような、その笑みを
「ああ、そうだね。」
「こうしている方がずっと楽しいよ、俺も。」 身動きが取れない状態の中、俺は何とか腕を彼の背中へと伸ばして、彼と同じその笑みを浮かべながら、その言葉を彼へと伝えるため喉を震わせるのだ。
目が眩むほどの
いつだって、彼のその笑みには敵わない
title by 赤小灰蝶 / 目が眩むほどの