「っ、(雷鳴?)」
ダイニングへと向かう途中でようやくその音に気付いた俺は、妙な不安感を抱きながらダイニングにあるソファへと腰を下ろした。雷光が見えなくなれば幾分かその不安も和らぐかと思ったから、準備ができる間はそこへと座ったわけなのだけれど、どうやらそれはあまり意味を成さなかったようで。
「 はあ、(困ったものだな、まったく。)」
子どもの時から全く直る兆しのないままに抱き続けてきたそれ。幼い頃に恐怖だかトラウマだか何だか覚えていないが、どうもこの光にも音にも、「雷」というものに苦手意識があるらしく、昔も今も妙な不安感を覚えるというか、普段安定している足元が急にぐらつくようなそれを感じてしまう。その上、自分が悪いのだけれどそうしてしまった原因を覚えていないのだからまた質が悪い。
「?顔色が良くないみたいだけど、具合でも悪いの?」
「いや、大丈夫だ。一時的なものだから。」
「そう?なら良いけど、」
心配してそう言ってくれるナミに笑みだけは浮かべて、不要に震える片腕をもう一方の腕で押さえながらそう返事をする。どうにかならないものかと思ったところでどうにも出来ないのがまた何だかやりきれなくて再度みんなには気付かれないようにそっと深く息を吐き出していれば、再度雷鳴が耳に響いてきて。
「・・・、 (仕方がないと言ったらそれまでだが、)」
「 、」
「うん?ルフィ、どうしたっ、!!」
その雷鳴に身体が面白いくらいに反応してしまってまたそれに情けなさを感じていれば、目の前のイスへと座っていたルフィが俺の名前を呼ぶのが耳に入ってきた。何だろうと思い彼の方を見上げれば別に伸びなくとも歩いてくれば良い距離であるはずのそこで彼は自分の能力を使って突然に俺の方へと飛び込んできて。何とか受け止めるまではしたのだけれど、それでもやはりバランスを崩してしまって気付いた時には天井が見える格好へと体勢が崩れてしまっていた。
「何やってんのよ、ルフィ。」
「・・・今の距離に腕を伸ばす理由が俺にはさっぱり理解出来ねェ。」
「確かに。」
周りに何だかんだと言われながらも、俺の背中へと腕を回したルフィはそのまま俺の肩へと顔を埋めてきて。誰もが彼の突然のその行動に疑問符を浮かべながら見ているけれど、それでもやはり彼はそんな事を全く気にしていないらしく。
「 どうした、ルフィ?」
「 分かんねェけど、こうしたらが直ると思ったんだ。」
彼の背中へと腕を回してぽんぽんと軽くその背中をたたきながらそう訊ねれば、彼から返ってきたそれはなんとも曖昧な理由の言葉であって。「んん?でも、何が直るんだ?、どこも怪我とかしてねェのに?」 なんて彼も不思議そうな顔をして俺に質問を返してくる。けれど俺はそれに答える前に、先程の彼の言葉に、その行動に笑みを零さずにはいられなくて、(まったく、彼は本当に、)
「 ルフィ、」
「ん?何だ、?」
「ふふ、ありがとう。」
いつの間にか止まっていた腕の震えに、心に居座っていた心地よいその安心感に、俺は思わず彼に回している腕を少しだけ強くしてしまう。本能的に俺のそれを悟ったらしい当の本人は「何で礼を言うんだ?」 なんて礼を言われる理由が分からなくて首を傾げる始末で。(そんな彼だからきっと俺はこんなにも、)
「まあでも、が笑ったんならそれで良いっ!!」
「にししっ!」 嬉しそうに、楽しそうに笑みを浮かべながらそう言って、起き上げていた身体をべたんと俺の身体へとくっつけてきた。そんな彼の行動を止める事なんて事はもちろん俺には出来なくて。触れている所から伝わってくる、心地の良いその体温に、その安堵感に似たそれに、俺は思わず目を閉じてそれをめいいっぱいに感じてしまいたい衝動に駈られてしまったのだ。(当然、それは我らが航海士によって止められてしまうのだけれど。)