いつものように眠りについたは良いのだが、ふと何かに誘われるようにして目を覚ましてしまう。通常ならそれに何ら違和感を持たずに再度瞼を閉じて眠ろうとするのだけれど、今夜はその何かの違和感を覚えてしまったのだからなかなか眠りにつけない。


「(・・・夜風に当たろうか。)」


そうすれば、幾分か落ち着くかもしれない。なんて思いながら、ゆっくりと身体を上げて周りで眠っている彼らを起こさないようにとそっと歩を進めて扉を閉めた。次は春島、いや夏島だろうか、甲板へと出ると、穏やかな風が吹いていてひどく心地が良かった。船縁に背中を当てて潮風を感じながら瞼を下ろす。


「(手を伸ばしたら、 この海は応えてくれるだろうか。)」


急にそんな事が頭の中を過ぎって閉じていた目を開いて海の方へと身体の向きを変える。そこに広がるのはいつもと変わらない、雄大で偉大などこまでも続くその青色。今は穏やかに揺れて、空に輝く星や月の光を反射させてその青色をさらに多様に輝かせていた。その色を多様に変化させるように、この海は色々な事を引き起こす。海賊としてそれはあまりにも平凡すぎる答えかも知れないが、本当に目の前に広がるその光景が、そんな海が昔から大好きだった。


「・・・どちらの応えもない、か。」


海へと向かって伸ばした掌は何かを掴むようにして握りしめられる。目の前に広がるこの海は自由気ままに揺れて、世界を繋げている。応えるなんて海に求めてはいけないのだと、心の中では分かっているつもりなのだがやはり自分が愛している海に応えて欲しいと思ってしまう時が少なからずあるわけで。


「(望むくらいなら、許してくれるだろう?)」


「    ?」


潮風に乗って俺の耳へと入ってきたその声。頬杖をついたままその方へと顔を向ければ、そこにいたのは眠たそうに目を擦りながらも俺の方から視線を外さずにじっとこちらを見ている我らが船長であって。


「  ルフィ?」


先程の彼のように名前だけを呼んでルフィに返事をすれば、彼は覚束ない足取りでこちらへと歩んできた。彼が夜中に起きるなんて冷蔵庫に鍵が付いてしまってからほとんどなかったというのに、どうしたのだろうか。そんな事を考えながら彼がこちらへとやって来るのをじっと見ていれば、彼は俺の近くまでやってくるとそのまま俺の背中へと張り付いてきた。


「ルフィ、どうした?君が夜中に起きるなんて珍しい。」
「   ふとんから落ちたら、がいなかった。」
「・・・君は、また落ちたのかい?」


いくらゴム人間だからとはいえ、危ないだろう? 張り付いて今にも眠りそうな彼にそんな言葉をかけるのだけれど、俺の言葉を聞いていないのかルフィは俺の腹部へと腕を回してきてそのまま自分の声を俺の耳へと響かせた。


「    ひとりでなんか、どこにも行かせねェ」


「急に、いなくなるな」 そう言って離さないとでも言うように回してきた腕の力を強めるルフィ。言っている言葉は若干繋がっていないように思えたが、その意は十分すぎるほどに伝わってきて。そんな嬉しすぎる彼の言葉に俺の顔を自然と緩んでくるわけで、


「何処にも行くわけないだろう?」
「   ほんとうか?」
「ああ、俺のいる場所はここだからね。」


腹部に回っている手に自分のそれを重ねながらそう言えば、「にしし、 !」 なんて笑いながら俺の名前を呼んでくれる。背中越しに伝わってくる彼の声はひどく心地よくて、触れ合っている部分から溢れてくる彼の体温がまるで海に包まれているかのような錯覚を感じたのは、きっと彼が俺にとって

溶解する温度

俺自身のそれが触れ合うだけで彼のそれと解け合ってしまうのは、



title by 鴉の鉤爪 / 溶解する温度(ざっくばらんで雑多なお題(日本語))