太陽が眩しいくらいに俺たちの船や海を照らしている中、ついでに言うと太陽が照らし出しているとは言え、船に積もってしまった雪がまだ僅かながら残っている程に冷たくなってしまっている空気に包まれている中、部屋に、布団の中に、潜り込んで出てこないのは・・・


「・・・船長、ロー船長、いい加減起きてください。」


先程からゆるゆると身体を揺らして起こそうとしているのだけれど、案の定、この人はいつものように、起き上がる気配を見せてくれない。因みに言えば、今は昼食をとるような時間である。


「ほら、たまには太陽の光を浴びて干されてください。身体に悪いですよ。」
「・・・今、お前いらねェ言葉を付け加えたろ、」
「起きてるんじゃないですか。ほら、早くそのまま身体も起こしてください。」


まだ眠たそうなその声で俺の言葉へと恨みがましくぽつりと呟いた船長は、最初こそ、もぞもぞと布団の中で起き上がる気配を見せてくれなかったものの、数分すると珍しく、俺の言葉に応えるようにしてゆるゆると上半身を起こしてくれた。それから寝癖のついたその髪をかき混ぜながら時間を訊いてくるから、昼食の時間だと答えれば、軽く返事をした後、今更気付いたのか、やけに冷えた空気に船長はひどく顔を顰めた。


「・・・誰だ、このくそ寒い島へ行くルートを選んだ奴は、」
「・・・貴方本人ですよ。」


「他に誰がこの船の航路を決めるんですか。」 その寒さの所為でなのか、理不尽にも怒りの矛先を俺達船員に向けようとした船長に呆れながらも正当な返事をする俺。(・・・いや、船長はいつでも理不尽極まりない気がするけれど。)(そんな事、言っても開き直りをされるか、ひどい目に遭わされるかのどっちかしかないから決して口に出しては言わないが。)


「・・・ちょっと船長、何また布団に潜ろうとしてるんですか。」


船長にそんな言葉を正直に紡いだ所為か、それとも元よりそのつもりだったのか、折角起き上がらせていた身体を再度ベッドへと寝かせ、布団の中に潜り込もうとした船長に気付いて、俺はすかさずその布団は足下へと捲ろうと手を伸ばした。


「こんな寒ィのに、お前は自分の愛する船長を外に放り出すって言うのか、」
「・・・愛する船長のためなら喜んで放り出しますよ。」


俺がそんな事をすれば、もちろん船長も自分の身体へと布団を戻そうとその手を伸ばしてくる訳で。手で攻防戦を繰り広げながら、口でも棒読みになってしまいながらもなんとか応戦をしていると、・・・何を思いついたのか、えらく楽しそうに口角を上げながら、何故だか俺の方へと片手を伸ばしてきて、


「・・・何ですか、この手は?」
「太陽の光を浴びせたいんだろ?」


くいっと俺の服の袖を引っぱって来て何を言い出すかと思えば、聞こえてきたのは先程まであれだけ嫌がっていたそんな言葉で。・・・確かに、太陽の光を浴びろとは言ったから、俺は船長のその言葉に首を縦に振る。

いくら何でもやはり籠もりすぎは良くない、ただでさえ不健康きわまりない生活を送っているというのに。(昨日も遅くまで本を読んでいた船長を無理矢理眠らせたし・・・もちろん俺は自分の部屋へと・・・辛うじて戻れたが。)(寒いとかいうくせに、夜中まで起きてそういう事はするのだから困りものである。)


「可愛い部下の頼みだ、仕方ねェから、聞いてやらんこともないが・・・」
「(・・・何でそんなに偉そうなんだ。)」


そんな言葉に俺は呆れながら返事をする。そんな事をしていると、ふと、冬島へと向かう途中だったいつぞやの時に、甲板にまで布団を持ち出してくるまっていた事を思い出して、「布団を甲板に持ち出さないでくださいよ。」と声をかけた。すると、船長は嫌な顔をする事はなく、


「フフ、もちろん、そんな事はしねェさ。」


なんて思わず聞き間違えてしまったのかと思ってしまうような言葉を返してきて。その言葉にまさか了承の意をもらえると思っておらず、俺が驚いて固まってしまっていると、船長はそれにも関わらず、ぐいっと掴んでいた俺の手を自らの方へと引っ張り込んできて、 「う、 わっ、 」


「・・・ちょ、ちょっと、船長っ、」
「 布団はいらねェが、  、」


「お前とずっとこうして過ごすのは、構わねェだろう?」  ・・・語尾を上げて訊ねてきたはずだというのに、拒否の言葉を言わせないような、そんな声音で放たれたその言葉に、思わず布団を持ち出しても良いです、と言いかけてしまったのは、仕方のない事だと・・・俺は思いたい。

白い季節は君恋しい

・・・さて、この船長の言葉にはどう答えるのが正解なんだろうか。(きっと、彼は1つの答えしか受け付けてくれないだろうけど。)



title by White lie / 白い季節は君恋しい(冬の日に十題)