街で買い物をしてかれこれ1時間。ベポに渡されたメモ用紙に視線を落として買った物へと頭の中でチェックをつける。紙袋には入りきらないくらいに果物やらお菓子やらお酒やらと詰め込んであり、今にも落ちてしまいそうなそれをなんとかバランスを保って紙袋を抱え直す。(因みに、両腕にも大量にそれらが詰め込んであるビニール袋を携えている)
いつもよりも買い込んでいるのは、船に保管してある食料が切れたとかそういう理由ではない。この大量の食料は、今日だけの為のものであるのだ。そう、今日で全て食べきってしまう予定なのだ。・・・俺達ハートの海賊団にとっては、一応、大切であるらしい特別な、今日だけの、
「・・・、 あれも欲しい。」
「もっと栄養バランスを考えてください。(・・・さっきから甘いものばっかり。)」
隣から聞こえてくるそんな声に、俺は呆れてしまいながらそう言葉を返して、顔をその人へと向けた。先程からここぞとばかりに甘いものへと指をさしてそんな事を言ってくる声の主は、本来なら俺の隣にはベポがいるはずのそこにいるのは、
今日が誕生日である、我らがロー船長で。
「・・・じゃああれ。」
「・・・確かに果物には栄養がありますが、もうこれ以上ケーキの上には乗せられませんよ。」
「・・・いい加減、甘いものから頭を離してください。」 一向に甘いものから目を離してくれない船長に、買い物について来た理由はこれか、なんて今更その考えに行き着く。誕生日である人に、何で買い物兼荷物持ちなんてものをさせないといけないのか、と最初こそ船長の「俺がと買い物に行ってくる。」なんてその申し出を断っていたのだけれど、あまりに船長が頑固に買い物に行くと言ったから、こちらが先に折れてしまったのだけれど・・・(というか、ベポも途中から船長側に付いていた気がするんだが。)
「野菜もちゃんと取らないとだめですよ。」
「今日くらい良いだろ?」
「・・・その言葉、いつも聞いてる気がしますが。」
俺の言葉を聞く気があるのかないのか、返事をしながらもお菓子を見つけては「これ、1つ買いてェんだが。」 なんて店の人に声をかけていく船長。その所為で、荷物持ちだけはさせまいと俺が袋を抱えていたというのに、気付けば船長の腕にも大きな紙袋が抱えられるなんて事になってしまっていた。
「俺の誕生日祝いなんだろ?少しくらい大目に見ろ。」
そんな船長の言葉に、「もう既に十分大目に見てるんですが、」なんて船長へとそう返事をしてしまえば、彼に言われずとも、もう既にずいぶんと甘やかしてしまっている事を認めてしまう事になる訳で。・・・それもそれでどこか気恥ずかしかったから、俺は少しの沈黙の後、つい、また甘やかしてしまう言葉を紡ぐことになってしまって。
「・・・それ以上、紙袋を増やさないでくださいよ。」
「フフ、 あァ、分かった。」
お菓子の量だけ、それに見合った野菜を食べさせれば良いんだ。 なんて自分に言い訳をしながら、俺がどう答えるのか分かっていたのか、口の端を上げながらそう言葉を放ってきた船長の顔を恨めしく見る。けれどそんな俺の顔にすら、えらく楽しそうな顔を向けてくるのだから本当にこの人は趣味が悪い。(・・・「またキャプテン甘やかして!」なんてベポに怒られるのは俺だというのに。)
全く遠くない、確定しているその将来に、俺は知らず知らずにため息を吐いてしまう。そんな俺の心境を知ってか、それとも知らぬ振りか、「、」と呼んできた船長がすいっとある方向へと指を向けた。何だろうと、そちらの方へと顔を向ければ・・・
「休憩がてら、あそこに寄るぞ。」
「・・・船長、船に戻ったらすぐに宴が始まるんですが。」
「それに、ケーキもパフェも、どっちも宴に出ますよ。」 ・・・どうやら船長はどうにも自制する気がないらしい。指を向けたその場所―「パフェ」やら「ケーキ」やらという文字が書かれている看板が店先に出ているその場所へと、船長は承諾を求めるのではなく、決定事項を伝えるようなその言葉を、いつもと変わらない口調で何を気にするでもなく俺へと放ってきた。
もちろん、「じゃあ寄りますか。」なんて言葉を俺が出すわけもなく。その甘いもの好きに呆れてしまいながら、船長にそう声をかけるのだけれど・・・船長は俺の言葉を取り合ってはくれないようで。
「甘いモンならいくらでも入る。 それに、甘いモンは別腹ってよく言うじゃねェか。」
「・・・(言葉と顔とがこんなにも釣り合わないなんて・・・)」
見た目からは、どう見ても甘い好きとは思えないようなその顔で、普通にそんな事をさらっと言いのけるものだから、つい、声には出さないものの、失礼な事をぽつりと吐き出してしまう。そのおかしさに、いや、天才には奇人が多いとか何とかどこかの島で聞いた気が、なんてさらに失礼な事でそれをもみ消していれば、「フフ、船長に向かって、失礼極まりねェなァ?」 なんて船長の声が聞こえてくる。どうやらすっかり顔に出ていたらしおい。船長のその言葉を聞いて、思わず、見られまいと紙袋へと顔を寄せた。
「フフ、 ほら、行くぞ。」
「わ、!ちょ、ちょっと、まだ行っても良いなんて、言ってないですよ!」
「行くなと言われても結局行くんだから問題ねェ。」
「・・・(このやろう、)」
有無を言わさず俺の腕を掴んで、その店へと足を運ぼうとする船長をどうにか止めようと足を使って必死にブレーキをかけながら船長へと言葉を紡ぐのだけれど、やはり、俺の意見は本当に全く無視の方向で決めたらしい。傍若無人のそんな言葉に、それでも俺はめげずに船長を店に寄らせること無く船へと戻らせようとなんとか対抗しようと・・・したのだけれど、
「 可愛い部下に、2人きりで祝ってもらいてェと思ったんだが、」
「その願いは、聞き入れてはくれねェのか?」 ・・・船長を始終甘やかしてしまうのは、今日が彼の誕生日だからだ。 と俺は心で思いながら、愛しい我が船長の言葉に承諾の返事をしてしまうのだった。