「・・・あの、ロー船長?」


3時のおやつにコックさんから出されたそれを頬張っていた俺の隣で、自分のおやつを食べていたはずのロー船長が「お前のそれも、食わせろよ。」 なんて言ってきたのはつい今し方の事で。まあ別に、船長が俺のおやつまで食べたがる事なんて稀でもなかったから、それに疑問は抱かなかったのだけれど、


「フフ、ほら、早くしろよ。」
「・・・自分で取って食べてくださいよ。」


ナイフで一口サイズに切り取ったそれを船長の皿に移そうとしたのだけれど、その腕を船長に掴まれてしまって。何かと思い、船長の方を見やれば、「俺は、食べさせろと言ったんだが?」なんて言いながら、ひどく楽しそうにこちらを見ている船長と視線があってしまう。数瞬、間を置いてようやく船長のその言葉を理解してしまった俺は、思わず深く息を吐いてしまう。けれど、そんな俺に反して、船長はその笑みを浮かべたまま、フォークを持っている俺の手を離してくれなくて。


「 生憎、俺は今、手が離せねェんだ。ほら、実に忙しそうじゃねェか。」
「・・・(俺の手を掴んでいるそれと頬杖に使っているそれが、どう忙しいと。)」


船長が自分の意見を変えてくれない事はよく知っているから、俺が何をどう言っても結局は船長の思うままに動いてしまうだろうなんて事は容易に想像できる訳だが、それの通りに動くのも何だか癪で、そのまま船長と絡ませていた視線をそのままに、少し、ほんの少しだけ抵抗を試みようと頑張ったのだけれど、


「  ?」
「・・・ああもう、分かりましたよ。」


いつも聞いているその声なのに、そうやって自分の名前を呼ばれてしまえば、結局、折れて降参するかのようにそう言葉を放ってしまうのは俺の方な訳で。俺のそんな言葉に口角を上げて笑みを浮かべるのを止めないまま、ロー船長はゆるりと口を開けて、掴まれた腕を伸ばしてフォークに刺さったそれを運ぶ俺を待ち構えて、


「  っ、 !」


何で俺がこんな事を、なんて思ったのも束の間、急に掴まれていた手が引き寄せられると同時に、フォークを持っていた指に、走るはずのない刺激が俺の中を駆け巡って、普通にフォークに刺さったそれを差し出していれば感じるはずのないその生温い温度を感じ取ってしまって。(・・・完璧に油断していた所に、)(というか、やると思っていたから渋っていたのに、)


「・・・ロー船長、それ、俺の指ですが。」
「ン? フフ、 あァ、それは気が付かなかったな。」


「ずいぶんと甘い匂いがしたから、ハチミツだと思ったんだが。」 白々しいようにそう言葉を放って、しかもそう言いながらまた指へと唇を寄せてくる船長は、それはもうとても良い笑顔を浮かべていて。そんな船長の言葉に、再度深く息を吐いてしまいながら、未だに掴まれたままの腕を自分の元ある場所へと戻そうとするのだけれど、それをさせてくれないのは、


「フフ、 どうせ甘いなら、俺はこっちの方を食べたいんだが、」


「構わねェよなァ、?」 語尾に疑問符を付けるような言い方をしてはいるものの、けれど否定を許さないようなそんな言い方で言葉を放ってきた船長に、「断って、それを了承する気なんてないくせに、」と口では紡ぐのだけれど、それが、奥底からの拒否ではないことくらい、船長も知っているから、(昼間から、何をやっているんだろう・・・船長も、俺も、)

ハチミツトーストを分け合いながら

そう言った俺の唇をゆるりと捉えた船長から、ふわりと甘い匂いが絡んできて



title by 回遊魚 / ハチミツトーストを分け合いながら(お茶の時間に五題)