雪がちらほらと降り出して甲板もうっすらと白色のそれで覆われているようなそんな気候に入った俺達の船。久しぶりであるその雪に寒さを感じている船員達を余所に、皮膚をもふもふの毛で覆っているベポは寒さなんて感じないようで、甲板を駆け回って楽しそうに遊んでいる。


「ああもう、見てるだけ寒ぃ。」
「ふふ、本当に楽しそうに雪だるまを作っているね、ベポは。」


身を縮み込ませている仲間と会話をしながら「ー!見て見て!!」 なんて言ってこちらに手を振ってくるベポに手を振り返す。さすがにベポのように遊ぶ程の元気はなかったから仲間の隣でその様子を壁に寄りかかって見ていれば、ドアがゆっくりと開くのが視界に入ってきた。誰だろうと思いそちらへと顔を向けると、そこには船長が、   船長?


「  やけに寒いと思ったら、」
「・・・船長、なんて格好しているんですか」


俺達の目の前に現れたのは、毛布を頭からかぶって風を通さないようにしっかりとそれにくるまっている何とも情けない格好の船長であって。ずるずると引き摺ってきたのであろうその毛布を再度構わず引き摺って俺の隣へと腰を下ろした。


「寒いのなら出てこなければ良いでしょう?(なんてだらしない・・・)」
「部屋に引きこもったままの船長なんて、示しがつかねェと思ってな。」
「(そんな格好で出てくる時点で示しも威厳もない気がしますが、)」


示しだの何だのと一応は気にする人だったのかと失礼極まりない事を思いながら、依然として毛布にくるまっている船長を見下ろしていれば、船長が俺の方を見上げてくるものだから「何ですか、」なんて、とりあえずは反応を返す。


「こんな俺の貴重な姿、なかなかお目にかかれないじゃねェか。」
「・・・そんな貴重さなんて誰がいつ求めましたか。」


「  冷てェなァ、は。」 俺の返事に対してそんな言葉を漏らす船長だけれど、言葉とは反対に顔には笑みを浮かべているのだからその言葉が全く切実なものに聞こえてこない。そんな中、ベポが「ッ!雪だるまができたよ! って、うわ!キャプテン何その格好!」 自分の作った雪だるまを指しながら、そんな事を言ってくる。(ていうか、ベポはなんて器用なんだ。)(なんかえらく芸術的なんだが、)


「   、」
「何ですか、せん、っ!!」


ベポが作った雪だるまに思わず感嘆の声を漏らしていると、そんなベポも驚くような格好をしている船長は急に俺の名前を呼んできて。何かと思いそちらの方を向こうとすれば、俺の返事を最後まで聞かずに彼はそのまま俺の腕を引っ張って自分のかぶっているその毛布の中へと俺を引き込んだ。


「・・・何するんですか、」
「身が凍えそうだってのに、追い打ちをかけるようにお前が心も冷たくしてくれたからな。」


そんな事を言いながら船長は自分の足の間に挟んでいる俺の腹部に腕を回して、隙間を作らないように俺にくっついてきて、俺の耳元に口を寄せながら再度言葉を続けたのだ。「だから、  」


「責任とって温めろ。」 


何がどうして「だから、」なんて接続詞が続くのだろう、そう思いながら白いため息を吐いている一方で、自分の言いたい事だけ言い終えた船長はそのまま俺の首元へと顔を落としてきて、笑い声を漏らしながら「あったけェな。」なんて幸せそうに言いのける訳で。どうやら我らが船長は俺の承諾なんて元々聞く気がないらしい。(全く、人工暖房物じゃないですよ俺は。)

君の吐息で温めて

何なら、今から部屋で温めてもらった方が速ェが?   ・・・蹴飛ばしますよ。    フフ、恐い恐い。     ・・・そんなこと、微塵も思っていないでしょう。(ていうか、俺と会話していた彼はどこに消えた?)
なあ、ベポ、若干暖かくなったような、逆に寒くなったような妙な感じなんだが(そもそも、あいつは船長にあますぎじゃねえ?)    へ?何訳分かんないこと言ってんのさ!    ・・・お前に言った俺がアホだった(つうか、船長もにあますぎだよな)(・・・今更始まったことじゃねえけど)



title by 赤小灰蝶 / 君の吐息で温めて