「ベポ、どうした?」
「あ、!キャプテンが酔っちゃったよー!!」
「 は?」
ベポの言葉に思わず耳を疑う。あの船長が酔っただって? ほろ酔い加減の彼なら、何度か見た事はあるものの、船員にまで酔ってしまったなどと言われるまで酔った彼なんて今まで見た事がないからだ。というか、船長が酔いつぶれてしまうとか阿呆にも程がある。
「でね、にキャプテンを部屋に、「断る」 ・・・ま、まだ最後まで言ってないよ!」
「キャプテンが、が良いってだだこねてるんだから!お願いだよー!!」 そんなベポの言葉に別に船長がだだをこねても可愛くも何ともないというかむしろ恐怖の部類に入るんじゃないか、なんて言い返そうとしたけれど、この可愛い白熊に言ったところで彼には何の罪もないのだから寸前の所で押しとどめた。
「 ん、?」
「・・・何ですか、船長。」
「ほら、キャプテン!が来たよ!」 そう言って方を揺らすベポの側らでゆっくりとこちらを見上げてくる船長、若干頬に赤らみが見えるのはベポの言っている通りだからであろうか。彼の声に返答すると、彼はやはりまたゆっくりと立ち上がって何をしでかすのかと思えば俺の目の前に止まった瞬間、自らの身体をこちらへと傾け思いきり倒れ込んできたのである。
「おれは、酔ってない。」
「・・・どの口がほざくんですか。いいから部屋に行きますよ。」
突然の行動に俺までも一緒になって床へと頭を打ち付けるところをベポに助けてもらい、ベポの嘆願に勝てなかった俺は腰に腕を回してべったりとくっついてくる船長を致し方なく彼の部屋へと運ぶ事を承諾したのだけれど。
「 、」 なんて呼ぶ船長の声を流して、そのまま彼の部屋へと入って奥にあるベッドへと連れて行く。そのまま寝かせてしまえば二日酔いの影響がひどくなることが目に見えていたので、水くらいは、と彼をベッドへと下ろしてキッチンへと足を向けようとした。
「水を汲んできますからそれを飲んでさっさと寝てください。そして俺を解放してください。」
「それは、できねェ頼み事だな。」
「 はい? っ!!」
そう返事をしてくる船長の声がどうも酔った時のそれではない素面のそれであったように聞こえたから、思わず彼の方へと向き直った瞬間、そのまま腕を引っ張られてしまう。急な出来事に俺は驚くことしかできなくて、ようやく焦点が合い状況を確認すると俺の視線の先には彼の部屋の天井と、酔っているとは到底思えない船長のそれ。
「・・・酔っていたんじゃなかったんですか。」
「俺はちゃんと言ってたがな、酔ってないって。」
「(あんな振りをしてどの口が、)」
頬の赤らみは今も変わらず残っているが、先程までの彼の覚束ない足取り、いつもとは違う舌足らずな口調とは似ても似つかない今のそれら。普段の俺なら、きっとこんな単純な手には引っ掛からなかっただろうが、俺もどうやら相当酒にやられていたらしい。謀られた、そんなことに気付いた時にはもう既に彼の唇が俺のそれへと重ねられていて。
「どうせ酒に酔ってンだ、ついでに俺にも酔っちまえ。」
「もっとも、俺がついでだなんて許さねェけどなァ?」 矛盾していることに気付いているのか、そうでないのか、至極楽しそうに笑みを浮かべてそう言葉を放つ船長。そんな彼の笑みがひどく妖艶に見えて、視線の先にちらつく彼の白い首筋がひどく扇情的に見えて、
「、」
名前だけを呼んで求めてくる船長に、いつの間にか彼の口付けに答えるようにそれを深めたのは酒の所為だということにしておこうと思う。(明日になれば、それは後悔のオンパレードとなるであろうことを見こして)
良からぬ事を企んで
別に酒に酔ってなくとも、貴方にはもう既に なんて酒に乗じて言ってしまおうか。
title by 赤小灰蝶 / 良からぬ事を企んで