真夜中、何だか眠れなかったから上半身を起こして読書をしているとノックもせずにずかずかと人の領域に入り込んできたキッド船長。通常でも一声はあるっていうのに、何をそんなに急いでいるのかと思われるほどの態度に疑問を抱きながら歩みを止めない船長に声をかけた。


「・・・船長? 一体どうし、っ!」


まだ話している途中だって言うのに船長は何も言わないまま急に俺の前進をベッドの中へと沈み込ませた。それの弾みで本はベッドの外へとはじき出されてしまったのだけれど、船長の突飛な行動の方に全ての意識を持って行かれていたので気付く事が出来なかった。天井から覆い被さる船長へと俺の視線が移って彼のそれとかち合った瞬間、彼はさながら猛禽類の如く俺の唇を急襲してきた。


「ふ、」


思わぬ急襲に対応なんてもちろんできることのなかった俺は本能的に酸素を求めるようにして口を開く。しかしそれを狙っていたのであろう船長は当然の如く、それを見逃さず自らの舌を滑り込ませる訳で。船長を引きはがせる事ならそうするのだけれど、性別が同じとは言え船長に勝てる程の力を持っているわけが無く。彼が漸く唇から離れた時、俺は漸く呼吸という行為を再開することができた。



「、 せんちょう、一体なんですか?」


呼吸を整えながら首元に顔を埋めて黙ったままの船長にそう言葉を紡ぎ出す。未だに理解しかねる船長の行動に目の前にある真っ赤な髪を視界に入れながら彼の返答を待っていると、ゆっくりと船長はその瞳を俺に向けてくれる。


「    、」


俺の名前を呼びながら唇に手を這わせて俺の反応を待つ船長。「はい、何ですか?」 と期待に添っているかどうか分からないがとりあえず反応をすれば、降ってきたのは優しい口付けであって。



「   キッド、船長?」
「ハハハッ!!」


先程とは全く違った対応にさらに頭を混乱させている俺に、船長は突然声を出して笑い始めた。一体何なんだ、急に入ってきたと思えば人を思いきり押し倒して挙げ句の果てに貪るようにして人の唇を奪っておいて。いや急に入ってくるのはまあ今回が初めてではないから良いものの、何人の事を急に押し倒して・・・いやこれも今回が初めてではなかった気がする。それにしたって人の唇を無理矢理・・・いや多分これも。


、」


考えれば考えるほど堂々巡りになっているそれに、ますます混乱を極めていれば、船長の放ったその声が部屋の中に響き渡る。しかめっ面をしていたのだろう、俺の眉間へと唇を1つ落としてきた船長は至極楽しそうな笑みを浮かべて俺に言い放ったのだ。


「俺に抱かれろ。」


許可なんて取ろうとする言葉ではなく、むしろそれは宣言のようなそれであった。その言葉通り船長は俺の返事を聞かぬままに首筋へと噛み付いてきたのだから、全く彼という人は仕方のない船長である。その行為を止めようと思えば止める事だって出来るはずなのに、それを憎めないのも拒めないのも、結局俺も彼と同じで仕方のない人間であるからであって。


「今日だけ、ですよ。」


そう言ってキッド船長の首に自分の腕を回せば、返ってきたのは不敵な笑みと深く貪るようなそれであった。

乗るも乗らぬも君次第

最も、乗らないなんて選択肢、彼が取らせるとも思えないのだけれど。 <



title by 赤小灰蝶 / 乗るも乗らぬも君次第