「・・・眠いのならそう言え。」
眠い、その一言も口には出していなかったし、そんな顔さえもしていなかったつもりなのだが、どうやら船長にはすべてお見通しだったらしくそのまま有無も言わせず俺を寝かせたのが1時間くらい前だろうか。船長に膝枕をさせるなんてどんな部下だ、なんて言われそうだけれど、自分で言うのも情けないのだが、俺達の船ではたまに見かける事の出来る光景となっていた。
「(初めは抵抗がなかったわけでもないけれど、)」
船長に膝枕とかそんな恐れ多いことを、なんて最初は思ったりもしたけれど、人間というものはそれはもう上手くできている生物で。順応やら慣れやらとそんな機能が備わっているおかげで、船長の膝枕が今ではもう心地よい、密かな俺のお気に入りの場所となってしまっていた。(密かな、なんて言っても船長にはもうとっくにばれてしまっているかもしれない。)
「、」
「 ん、なん、ですか?」
おぼろげな意識の中、船長に呼ばれたから何とか舌足らずな口調で返事をすると「どうやら、おれ達に用がある者が現れたようだ。」 そう言って船長はある方向を指差した。何だろうと目を擦りながら顔を仰け反ると、あからさまに面倒くさそうな輩数名がこちらを見て気持ちの悪い笑みを浮かべているのが目に入った。
「・・・せっかく、船長の膝枕で気持ち良く寝ていたのに、」
「それは彼奴らに言え。」
不満たらたらに俺がそう呟くと、そんな言葉を返してくる船長。船長の足に顔を埋めていたから顔は見られなかったけれど、声質から船長も俺と同じように不満に思ってくれていたことが分かって、顔を埋めていたことを心底良かったと思ってしまった。(船長も俺と同じ気持ちだったなんて、考えるだけで顔が緩んでしまう。)
「ハハッ!!こんな所で億越えの海賊に会うとはな!!」
「、そろそろ起きろ。」
「おい、人の話を聞いてんのかァ!?」
彼の言葉に俺はゆっくりと起きあがって、至福の時を邪魔した奴らに目を向ける。「お前達の逃亡率は100%だが、それの成功率は0%だ。」 カードを広げたままそう言葉を放つ船長の隣で俺は立ち上がり、船長の言葉が言い終わるや否や奴らの1人を蹴飛ばした。
「 覚悟は、できているんだろうな。」
「ヒィッ!!!!」
飛ばされた仲間の方を唖然として見つめていた仲間に冷たく言葉を放つと、奴らはその場に固まってこちらを見つめたまま動かなくなった。それが恐怖からか、何なのからかは分からなかったが、逃げてくれるよりもそちらの方が俺としては助かった。(こんな奴らに体力を使いたくない。) そんなことを思っていると、後ろから俺の名前を呼ぶ声を聞く。「 、」
「? 何ですか、船長?」
「早く終わらせろ。」
「まだ、寝足りないだろう。」 そう言って俺の頭を撫でてくれる船長。
そう言ってくれるその声が、俺を撫でてくれるその指が、あまりにも優しいそれらであったから、俺は今すぐにでも船長の足へとダイブしてしまいたい衝動にかられてしまった。(ああもう、船長ってば、)
成し遂げるための必須条件
奴らに向き直った俺は即座に吹き飛ばしに駆けだした。
title by 赤小灰蝶 / 成し遂げるための必須条件