「(はあ、なんて素晴らしい本だ。)」
最後の巻の裏表紙を閉じる。買ったあの日から何日経っているかなんてもう判断がつかなかったけれど、それを忘れるくらい素晴らしい本だったということは理解できた。さすが、ドレーク船長が勧めてくれた本なだけある。
「(久しぶりに、風に当たろうかな。)」
ここのところ、めっきり部屋に籠もりっぱなしになっていたから、海賊だというのに潮風どころか太陽にすら当たっていない状態が続いていた俺。さすがにそれはいただけないかと思った俺はその本を棚へと入れて自分の部屋を後にした。
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「 、」
「あ、船長。」
甲板へと赴けば、気持ちの良い風が吹いていて思わず目を閉じてしまう。けれど、何かいつもと異なる違和感を覚える、目を閉じて何だかその瞼が開かなくなってしまうような。そんな事を感じていれば、後ろから声を掛けてくれたのは我らがドレーク船長で。
「本は読み切ったのか?」
「はい、全て。さすが船長が勧めてくれただけありますね。とても面白かったです。」
「フフ、それは良かった。」
笑みを浮かべて船長にそういえば、彼は俺の頭を撫でながら嬉しそうにそう言葉をかけてくれる。優しく撫でてくれるその手つきに、俺はまたいつもとは違った違和感を覚えてしまうわけで。何なんだろう、これは。そんな事を考える時間もなく、俺の意識はその違和感に侵されて、さらにそれは身体へも侵入していき、俺の身体をふらつかせた。
「 う、わ、」
普段なら持ちこたえられるそれもそのまま崩れるようにして前方に、ドレーク船長の方へと倒れ込んでしまう。けれど船長はそれに驚きもせず、推測していたかのような素振りで俺を華麗に受け止めてくれた。ありがとうございます、そう船長に言葉を紡ごうとするのだけれど、その違和感は思ったよりも急速に、というよりも船長のその心地よい腕へと受け止められた瞬間、さらに速く俺の意識内へと浸透していったらしく、意識がどんどん遠のいていくのが分かった。
「あれ? せんちょ、」
「三日三晩、不眠不休で本を読んでいたんだ。」
「当たり前の結果だろう。」 なんてため息混じりに言われてその違和感が何だったのかをようやく理解する。けれどそれを理解するには少々遅かったらしく、もう俺はベッドへと歩を進める力もなければ意識も保っていられなかった。けれども船長はこれも予想済みだったのか、俺の膝へ、そして俺の脇へと自分の腕を入れてほとんど瞼を閉じかけている俺を抱きかかえた。
「知識を入れるのは良い事だが、あまり無茶をするな。」
その温かさに微睡んでいれば、聞こえてきたのはその微睡みを加速させるような心地の良い声で。「毎回こんなことをされたら、さすがに敵わない。」なんて微笑んで俺に声をかけてくる船長。それが厄介だからか、心配だからなのか、その言葉の意味を訊ねたかったのだけれど、すでに俺の意識はもうその違和感に飲み込まれてしまった後だった。
不眠不休の大実験
あまり無茶をすると、船長に怒られるのでほどほどにしようと思います。
title by 赤小灰蝶 / 不眠不休の大実験