「  あ、クロコダイルさん、おかえりなさい。」
「・・・何だその間抜けな声は、」


「ここで待ってろ。」 そうクロコダイルさんに言われてどれくらい時間が経っただろうか。最初の頃は、クロコダイルさんが置いていってくれた本を読んでいたのだけれど、それを読んでしまってからは、所在なく部屋か、外の風景を眺める事しかできなくて。かと言って、外に出てしまえば、クロコダイルさんに怒られてしまうから、こうして部屋をぼーっと眺めている事にしたのだけれど、


「本は・・・全部読んだのか。」
「・・・はい、」

「ちっ、この時間には終わるかと思っていたんだが、」 ドアの方からこちらへとやってきて、そのまま俺の隣へと腰を下ろしたクロコダイルさんは、俺が全て読んでしまった本を見やりながら、舌打ち混じりにそんな言葉を吐き出した。けれど、そんなクロコダイルさんの機嫌が悪くなっているのにもかかわらず、俺がそんな彼に声をかける事ができないのは、話しかけづらいとか、そんな理由じゃなくて、


「ん、 (ねむい、です、)」


部屋をぼーっと眺めるなんて、そんなゆるりとした時間を過ごしていれば、睡眠欲が徐々に出てきてしまうのは至極当然のことだと、俺は思う訳で。そして、本を読み終えてからはそんな時間を過ごしていたから、クロコダイルさんが帰ってきた今、既に寝てしまいそうな状態になってしまったのは、仕方のないはずだと、俺は、思いたい、んですが、クロコダイルさんは、(・・・どうなんだろう、)


「おい、、」


聞こえてくる、その低い声でさえも、今の俺の脳内では心地よいそれに変換されてしまうらしい。降ってくるそれらに、もっと近づきたくて。でもそんな事をしてしまえば、クロコダイルさんは怒ってしまうだろうか、ぐるぐるとなんとか脳内に残っている理性で葛藤していると、突然、後頭部に何かが触れたかと思った瞬間、同時に身体が傾いて、


「う、わっ ?」
「ったく、・・・これだからガキは、」
「え、あ、 クロコ、ダイル、さん?」
「うるせえ、さっさと寝てその間抜けな面を変えやがれ。」


「起きてる方が、まだマシだ。」 そう言いながら、俺の頭を自分の肩へと押しつけるクロコダイルさん。突然の、そんなクロコダイルさんの行動に、いまいち理解が追いついていなかったのだけれど、彼から放たれたそんな言葉に、身体に伝わってくる心地よさに、俺はゆるゆると頬を緩め始めてしまって、(ふふ、もう、)


「 ありがとう、ございます、クロコダイルさん、」
「早く寝ちまえ。」


そう言葉を吐き出しながら、葉巻を吸い始めたクロコダイルさんの隣で、俺は言葉をそっと紡ぎながら、その気持ちの良いコートへと顔を埋めて、沈み始めていた意識に助長をし始めたのだ。

冷たい手と、冷たい頬と、暖かい隣

けれどその温かさは、何よりも、温かくて、心地よくて、



title by Lump / 冷たい手と、冷たい頬と、暖かい隣(middle)