「 よし、今日はこれで終わり、かな?」
頼まれた布団が予想よりも遙か上を行く量だったから思ったよりも時間が掛かってしまったけれど、なんとか、毎日楽しみにしている3時のお茶会に間に合いそうだ。布団を部屋へと取り込んで食堂へと行っても、もう少し時間が余りそうだと判断をしてしまった俺は、
「ふふ、 (温かくて、ふわふわしてる。)」
少しだけ、と日干しした時のあの独特な匂いの誘惑に負けてしまい、たたんで甲板の上に置いていた布団へと身体をばふんっ、とダイブさせてしまう。一瞬にして身体中に伝わってきたのは思った通りのひどく心地よいそれで。どうしようもなく緩んでいってしまう顔を抑えられないまま、そのふかふかとあまりにも気持ちの良いその感触に俺はさらに顔を埋めた。
「(このまま昼寝、なんてとても気持ちいいんだろうなあ、)」
なんて、そんな事を考えてしまっていると、徐々に、だけど確実に俺の身体へと睡魔が押し寄せてきてしまったようで。もう少し、ほんの少しだけ、なんて言い訳をしながら、瞼を下ろしてゆらゆらと揺れる睡魔の海へと身体を漂わせていると、
「フフ、ずいぶんと気持ちよさそうだな、。」
大好きな、聞き間違えるはずのないその声が寝そべっていた俺の上から聞こえてきて。
「へ? っ!! び、ビスタさんっ!」
その声が耳に響いた瞬間、反射的に意識を浮上させ、がばっと身体を起こして後ろを振り返れば、そこにはやっぱり大好きなその人がいた。彼の姿と声が俺の中で一致した瞬間、俺は慌てながらも何か言葉を出さないと、と思って口を開くのだけれど
「あ、え、これはっ、その、えと!」
何を言えば良いのかも纏まらないまま、ようやくなんとか出した声は全く意味を成さないそれらで。口を開けば開く程、情けない声しか出せない気がして、すぐに口を一文字に閉じた。
・・・なんてだらしのない姿を見られてしまったんだろう、しかも、よりによって大好きなその人に。恥ずかしさやら情けなさやらで、顔にぶわっと熱が広がるのが嫌でも感じられた。がばっと勢いよく身体を起こした時、咄嗟に正座という体勢を取っていた俺は脚へと手を乗せたまま、その火照りを隠すように甲板の木目へと顔を向けた。
「 、」
「っ、 は、はい!」
ビスタさんから放たれた俺の名前に、俺はまるで親に叱られる子供のように、びくっ、と情けないくらいに身体を震わせてしまいながら背筋をぴんと伸ばして返事をする。呆れられてしまうだろうか、何でビスタさんに見られてしまったんだろう、なんて後悔しながら、返事をしたけれど視線は下に向けたままでいれば、 ふわりと、俺の頭にビスタさんの大きな手が乗せられて、
「? ビスタ、さん?」
「フフ、なんだ?怒られでもすると思ったのか?」
「もちろん、そんな事をするつもりはねェし、呆れる事もしないさ。」 ビスタさんのそんな行動に思わず視線を上げた俺に、ビスタさんは何だか楽しそうな笑みを浮かべてぽんぽん、と俺の頭を撫でながら続けるように言葉を紡いでくれる。まるで俺の心を読んだようなそんな言葉に一瞬驚いたけれど、でも、さらにその後に放たれた言葉に俺はその驚きをすっかり忘れて、嬉しさで身体中をいっぱいにしてしまうのだけれど。「だがな、 、可愛らしい顔してうたた寝するのは構わんが、」
「うたた寝をするなら、俺の目の届く範囲でしてくれると有り難いんだが。」
ゆるりと紡がれたそんな言葉と共に俺の身体へと降りてきたのは、日干しした布団よりもずっと温かい、ビスタさんのマントで。
「風邪ひかないように見ててやれるからな。」
そんな事を言われてしまえば、溢れ出てくる感情を抑えきれなくて、先程よりもひどく緩んだ顔ができあがってしまうのは仕方のない事だと思うのです。(ああ、もう、 )
ホカホカに暖めたお布団
ありがとうございます、なんて俺の言葉に、ビスタさんは俺の頭を再度ゆるりと撫でてくれて、
title by White lie / ホカホカに暖めたお布団(まったりした五題)