夢の中でなのか、それとも現実からなのか、けれど確かに俺の名前を呼ぶ声が聞こえて。そういえば、欲しかった本を街で買ってそのままベンチで一休みしていたんだったか、なんて妙にぼんやりしている頭で考える。「・・・、」 2度目のその声で、俺はようやくベンチでそのまま眠ってしまったのだと理解した。
「、このままだと風邪をひくが、」
「 ・・・ん、」
聞き覚えのあるその声に、俺は閉じていたらしい瞼をゆるりと開ける。頬に感じる温かさについ微睡んでしまいつつも、ぼやける視界に映されるその姿を俺の瞳はしっかりと捉えて、頬を緩めたまま、その人の名を紡ぐために喉を、唇を震わせて、
「 ビスタ、さん、」
「フフ、なんだ、一応は俺だと分かっていたのか?」
俺のその声に答えるように、頬まで降りていたその手が額の方へと上がって、再度それで撫でられる。その手が起きろと促されているのか、それとも眠りを助長しているのか分からないくらいに、俺はどうやら寝ぼけていたようで。普段なら、そんな事は、撫でてくれていたビスタさんのその手を自らのそれで掴んで再度頬にその大きな手を持って行くなんて、そんな恥ずかしい事は、(・・・しない、はずなのに、)
「ふふ、ビスタ、さん、」
「・・・これだから、寝起きは放っておけんな。」
「、?? あれ?」
ついつい浮かべてしまう笑みをそのままに、その心地よさに顔をすり寄らせていれば、ため息混じりのそんな言葉が聞こえてきたと思えば、次に俺を襲ってきたのは、ベンチに座っていれば覚える事のない浮遊感で。
「バランスを崩しやすいかも知れんが、しっかり捕まっておくんだぞ?」
そういえば、目の前にあったビスタさんの顔が、いつの間にか見えなくなっていた事に、その声を聞いてようやく気づいた俺は、それと同時に、まるで子供を抱えるようにビスタさんに抱えられているのだという事にも気づく。先程よりもビスタさんのその体温をいっぱいに感じられるのと、視界の先に先程まで座っていたベンチが見えたから、たぶん、抱えられているという事で、合っていると思う。
「(・・・温かい、)」
この格好だと、自然と俺の腕はビスタさんの首周りに回されているのだけれど、その温かさを求めるように、しっかり掴まれと言ってくれるビスタさんのその声に応えるように、俺がその腕をしっかりと彼に回して、首元に顔をゆるりと埋めれば、
「フフ、 あァ、それで良い。」
「船に着くまでそのまま一眠りでもしておけ。」 なに、着いたらちゃんと起こすさ。 そう言いながら、俺の頬へとゆるりと唇を寄せてくれるビスタさんの、その心地よい声を聞きながら、俺はまた、ゆっくりと眠りの中へと落ちていったのだった。
日向ぼっこ
わ、あ、!び、ビスタさんっ!?す、すみませんっ、お、俺またビスタさんに運んでもらってっ、 そんなに慌てるな。落としてしまうぞ? い、いやだから、下ろしてもらってっ、 フフ、それは、無理な注文だな。 ・・・うう、(なんて、恥ずかしい。というか、またやってしまった、) フフ、どうした?顔が赤いぞ?
title by capriccio / 日向ぼっこ(協奏曲 第十番 / Freak concerto op.10)