「ん?どうした?さっさとオヤジに頼まれたモン買いに行くぞ?」
「ついでにメシも食うか?腹減ったしな。」 そう言いながら俺の隣をゆっくりと歩いてくれる隊長は、楽しそうに笑みを浮かべながら、それが本心からくるものだと分かってはいるけれど、一方で、隊長が周りに気を張っている事も、少しだけど俺には感じられて、
「・・・食い逃げは駄目ですよ。」
「う、わ、分かってるって!」
片手を自分の頭にやって少し焦りながらいつも聞いているその言葉を俺に言ってくるエース隊長に、・・・それから、もう片方の手が俺の手を包んでくれている事に、苦笑を漏らしてしまって、
「隊長、」
「な、何だ?メシ代なら今日はちゃんと、」
「俺は、そんなに頻繁に襲われたりしませんよ?」
「っ!」
そう紡いだ俺の言葉に、俺の手に触れていた隊長の手が、目の前にある隊長の身体が、分かり易いくらいにピクリと動きを停止させたものだから、俺も前へと進めていた足をゆるりと止める。
この前、俺が人攫いに攫われてしまった事で、たぶんまだ隊長は心配してくれているんだろう。その出来事の後、久しぶりにこうして街のある島に着いて、その時約束した通りに、エース隊長に一言言ってから街に出ようと声をかければ、「なら、俺も行く。」とすかさず言葉が返ってきた時から、何となく、分かってはいたけれど、
「ほら、あの時は、俺もちょっと眠たかったのもありますから、」
「でも、今は大丈夫ですし、」 あの時、隊長に迷惑を、心配を掛けてしまった事にはひどく反省しているから、それ以来、眠い時には外に出ずに船の上で過ごすようにしている。それに、脳内がしっかりと働いている時は、あんな人攫いに襲われたりなんかしないし、襲われてもそれに対処できるだけの戦闘能力は持っているつもりだから、ちゃんと起きている今は、この前のような失態は起こる事はない・・・と俺は、思っているのだけれど、
「・・・そうは言ったって心配になるだろっ!」
「万が一襲われても、俺はちゃんと対処できますよ?」
「お前の力を疑ってるわけじゃねェぞ? でもな、お前たまに転けたりするから、それで勝っても怪我して帰ってくる事があるじゃねェか! それに!お前が襲われるのは万が一じゃなくて、千が一、いや百が一くらいに多いんだぞっ!?」
「・・・隊長、自分で言葉を作ってますよ?(百が一って、)」
重ねていた手が離れ、両手ががしっと俺の肩におかれるのを見やりながら、一気に俺へと言葉を放ってくる隊長へとまた視線を戻して。この前の事もあるし、心配してくれていると分かっているから、俺もエース隊長に強く言えなくて、おかしな所にしか反応ができない。それに、嬉しくないわけではないのだ。隊長が俺の事を思って言ってくれているのを知っているから。でも、俺の所為で、隊長の手を煩わせているんじゃないかと思うと、やっぱり申し訳なく感じてしまって。そう言葉を、隊長に紡ごうとすれば、
「それに、これは俺がしたいからやってるんだ。」
「だから、が気に病む事なんて1つもねェ。」 まるで俺の心を読めるんじゃないかってくらいに、そんな言葉を俺へと放ってきた隊長。の、俺に向けるその顔が、とても優しく笑みを浮かべていて、肩を掴んでいた手が、ゆるりと俺の頭を撫でてくれるから、(ああ、もう、)
「ほら、、」
手を重ねただけで
俺の名前を呼びながら再び手を包んでくれる隊長の手がひどく心地よくて、つい顔を緩ませてしまうのだ。
title by 赤小灰蝶 / 手を重ねただけで