部屋の中にまで響いていたはずの雷鳴が、知らず知らずのうちに聞こえなくなったのは、側にある隊長の鼓動が俺の脳内で響き渡っているおかげだろうか。雷鳴とは違う、一定に刻まれるその音に、俺は顔を押しつけられながらも、突然に俺の部屋へと入ってきた隊長へと何とか顔を上げて彼の名前を声に乗せる。部屋に突然入って来られるだけならまだしも、そのまま俺が入っていたベッドの中へと何を言うわけでもなくもぞもぞと入り込んできた隊長は、そのまま俺を抱き込んでくれて、
「 あの、隊長?」
雷に自分でも分からない程に苦手意識を持ってしまっている俺にとって、雷鳴がこれでもかというくらいになっている今の天候は辛いものであるから、隊長がこうして俺を抱き込んでくれるのはひどく落ち着く事の出来る状態にある訳で。そして、隊長もそれを知ってはいるのだ、俺が雷を苦手としている事を。けれどまさか、それが理由で、なんて(そんな、自惚れにも似た、)
「 お前は何で、こう、」
「 隊長?」
「まあ、そこがお前の良い所なのかも知れねェけど、」
「??」
困ったように笑みを浮かべながら、隊長はそんな言葉を紡いできて。彼の言葉の意図がいまいち掴みきれなくて、頭に疑問符を浮かべて彼を見やれば、その笑みのまま俺の視線を捉えた隊長はゆるゆると頭を撫でてくれる。それすらも俺の中では心地よいものになって、いっそう、雷鳴から俺の意識を遠のかせてくれるものになって、
「 エース、隊長、」
「ん?」
違うのかもしれない、けれどたぶん隊長は、 なんて不確定な、間違っていれば俺のとんだ自惚れになるかもしれないそんな考えが俺の脳内に弾き出される。隊長が直接その言葉を紡いでいないから俺の憶測でしかない、そう思っているはずなのに、その考えが脳内を駆け巡ってしまうだけで、顔が徐々に緩んできてしまって、
「 ありがとう、ございます、」
溢れ出てくるそれらを抑えきれなくて気付けばその言葉を紡いでいた。耳に響いてくる隊長の生の証が、触れているところから伝わってくるその体温が、俺の全てを包み込んでくれているように感じるのは、気のせいなんかではなくて。安堵感と一緒に俺の身体に広がるそれが彼にも伝わればと、隊長の背中へと伸ばしているだけだったその手を、少しだけ、抱きしめるように力を強めると、
「 わっ、」
けれど、それと同時に、俺の背中へと回されていた隊長の腕がまたさらに強められて、俺が強めたはずの腕は再度、ベッドへとぽすっと落ちてしまった。更に言えば、腕を強められたせいで俺の顔は彼の胸元へとぴたりとくっついてしまう格好になってしまって。そんな隊長の行動に、顔を上げてその意図を聞こうとしたのだけど、俺の顔は彼の胸元にくっつけられたまま、後頭部を隊長の片手で押さえ込まれてしまって、 「 あの、隊長?」
「 、」
「たい、ちょう?」
「ほら、寝るか。」
「その為に、早くに部屋に戻ったんだろ?」 押さえ込まれている所為で、彼の顔を見る事はできなかったけれど、その声が俺の中へと溶け込んでいって、自然と瞼が降りてしまうのだから、(貴方の体温が、 声が、 こんなにも、俺を、)
「 ずっと、こうしててやるから。」
雷に眠りを乱される
響いていた雷鳴の代わりに俺の脳内へと溶け込んできたのは、愛しい貴方の、
title by 赤小灰蝶 / 雷に眠りを乱される