冬島、それもたぶん、季節も秋やら冬やらなのだろう、気温がぐっと下がり、最近はちらほらと雪が降ってくるのを見るようになった。まあ、それなりに寒い。・・・寒いが、マフラーやらコートやらを着込む程の寒さには今日はなっていない。


「今の気温でそんな状態じゃ、島に着いた時どうすんだよ。」
「・・・大丈夫です、たぶん。」
「・・・まったく説得力がないぞ、お前。」


けれど俺の隣でそのマフラーやらコートやらを着込んでいる。大げさ過ぎじゃないかとも思ったが、こいつの場合、本当にそれらを着込むくらい寒いのだろう。寒さに弱いって言ったって程があるだろ、なんて思いながら、言葉を放てば、こいつはまったく行動が伴っていない返事をしてきた。

甲板に出て来た理由を聞けば、「偶には外の空気も吸わないと身体に悪いですから。 それに、冬の海も綺麗ですし。」 なんて笑顔で言ってきたに、まさか部屋の中に入っておけなんていう事もできなくて。それから、隣に腰を掛けてきたこいつとのんびりとそんな会話を繰り返していると、後ろから足音が聞こえてきた。


「  っ!」
「あ、エース隊長。」


頬杖をつきながら隣を見やれば、の横にいたのは、やはりというか何というか。エース隊長の姿を捉えたは暢気に隊長の名前を、震える唇で紡ぎ出しながら隊長を見上げる。そうすれば、隊長はの方を何故だか眉間に皺を寄せながら、視線を合わせるようにしゃがみ込んで、


「寒いの苦手なのに、何で甲板なんかに出てるんだ。」


「着込んでるっつっても、風邪ひくかもしれねェだろ?」 ・・・この過保護め、まるで親のようにのマフラーを巻き直しながらそう言う隊長に、思わずそんな言葉を放ちそうになって口を慌てて閉じる。代わりに白くなってしまう息を盛大に深く吐きながら、2人の様子をうかがった。


「っ! ・・・もうこんなに冷たくなってんじゃねェか。」
「わ、隊長の手、温かいですね。」
「お前ェの手が冷たすぎるんだ。 ほら、もう中に入るぞ?本当に風邪ひいちまう。」


の両手を自分のそれで包み込んだ隊長はさらに心配そうな顔をしながら、のその手を温めるかのように息を吹きかける。で、よほど隊長の手が温かかったのか、隊長に心配されたのが嬉しかったのか、隊長とは対照的に自分の顔を緩ませている始末で。そんな返事をしてくるに、今度は隊長が盛大に息を吐きながら、諭すようにに立ち上がるように声を掛けるのだけれど、


「もう少しだけ、海を見てからじゃ、駄目ですか?」


「もう少し、ほんの少しだけですから。」 隊長の言葉にそう返答する。先程浮かんでいた笑みはそのままだったけど、でも心配をして自分にそう言葉をかけてくれる隊長に、どことなく申し訳なさそうに、はそうエース隊長に頼み事をした。こいつの海好きはこの白ひげ海賊団で知らない奴はいない。・・・そしてたぶん、彼はそれを誰よりも良く知っている。知っているから、


「・・・ったく。  少しだけ、だぞ?」
「っ、はい。  ありがとうございます、隊長。」


に対してなのか、自分に対してなのか、一言だけそう放った隊長は困ったように笑みを浮かべながらも、結局、の言葉を聞き入れて。その言葉に再度、笑みを浮かべてそう自分に紡いだに、エース隊長はその後ろへと回り込んで、そのままの身体を抱え込むようにして腰を下ろした。


「   隊長?」
「こうしてる方が温かいだろ?」


「風邪なんかひかれたら、たまったもんじゃねェからな。」 そう言ってさらに触れ合う面積を大きくしながらへと向けるエース隊長のその顔が、隊長の体温を感じてなのか、隊長のその言葉を聞いてなのか、海を見つめるのその顔が、(まったくこの人らは、)


「  ふふ、エース隊長、」
「ん?」


「(今が冬で良かったかもな・・・)」なんて思いながら、俺は先程よりも温かくなった気がするような身体を方向転換させて、その理由である2人の会話を最後まで聞くことなく、甲板を後にすることにしたのだった。(これ以上聞いてたら、温かい通り越して熱くなっちまうだろ?)

凍えるすべてをいますぐ熔かして

あんな嬉しそうな顔、お互いがしちゃってなー。



title by 鴉の鉤爪 / 凍えるすべてをいますぐ熔かして(散文じみた100のお題)