いつもなら俺のその声にすぐに返事をしてくれるの声は一向に返ってこなかった。まあ、それはが気持ちよさそうに寝ているから当たり前と言ったらそれまでなんだが、分かっているくせにその声で俺の名前を呼んでくれねェかな、なんて思っちまう自分に思わず苦笑が漏れる。
「・・・、」
たぶん、このままこいつの名前を呼び続けたら、後数回もすれば寝惚けながらも俺の声に反応しては起きるだろう。確信にも似た、そんな事を思いながら、もう一度だけの名前を呼ぶために喉を、唇を震わせた。返ってくるはずのない、その愛しい声を期待して、
「 ん、」
「っ、 (起こしちまったか?)」
予想をしていなかったの声に、髪に絡めていた指を思わずピクリと震わせる。けれどは単に身動ぎをしただけだったらしく、天上を向いていた顔が俺の方へとゆるりと移ってきたが、その瞼が開く事はなかった。
「 (何やってんだ、俺は。)」
さっきまで自分の名を呼んで欲しいと思っていたはずなのに、いざ自分の声でを起こしてしまったと思ったら急に情けない程に指を震わせるなんて。自分の矛盾しているような言動に、再度顔に苦笑いを浮かべながらも、止めていた手をまたゆるゆるとの髪へと絡め始めて、その髪を、の身体を俺の方へと引き寄せて、
「( 、)」
「 愛してる。」 俺の隣でこうして心地よさそうに寝ているその顔も、起きた時に少しだけ舌足らずに挨拶をしてくるその声も、本当はして欲しくねェが怪我した時に俺に心配をかけまいと黙って治療してくるそんなとこも、の全部が、俺は、
吐き出した息すら愛しい
「エース、たいちょ、う、」 寝言で呟かれた時でさえ、こうして緩む顔を抑えきれねェんだ。
title by 赤小灰蝶 / 吐き出した息すら愛しい