かちゃかちゃと自分の手首やら足やらに頑丈に巻かれている鎖を見ながらそんな事を考える。眠気をそのまま抱えたままで散歩をしに船を出たのが運の尽きか、そのまま本能に従うが如く近くにあったベンチで寝てしまえば気付いた時にはこんな情けない格好へと早変わりしていた。いくら何でも担がれた瞬間に気付いたのだろうが、どうやら彼らはぐっすりと寝ている俺にさらに薬を使ったらしい。視線を動かした先のテーブルにそれらしき瓶が目に入った。
「ははっ!何だ、俺らが怖ェのかあ?」
「( 隊長にこれがばれたらどうするか)(・・・それだけは絶対に阻止しないと。)」
「おいっ!聞いてんのか!?」
「やめとけ、傷を付けると値が下がるかも知れねえ。」
「それに、声が出せないくらい怖いんだろう?」 なんて勝手に会話を進ませている俺を連れ去ってくれたふざけた輩達。おまけに先程怖いだなんだと言ってくれた奴は襟元を掴んで顔を近づけて舐め回すかのように俺を見てくる。居心地の悪いというか気持ちの悪いものでしかないそれに顔を顰めていれば、何を勘違いしたのか「ははっ、怖がった顔も可愛いじゃねえか!!」なんて意味の分からない言葉を放ってきた。(怖がるなんてもっての他だし、しかも可愛いってなんだ。)
「ヒヒっ、いくらで売れるか!!」
「これなら上等な酒がいくらでも買えんじゃねえのか!?」
えらく楽しそうにそんな会話をする奴等。それに比べて俺の気分は急降下していた。隊長やマルコさん、それに親父さんにこの事を報告しなければいけないのが、今から考えただけでも気分が滅入る。「またか、お前ェは」なんて親父さんには笑われてしまうだろうか、たまにやってしまうから親父さん達もそれに関しては怒らないでくれるのだが、自分に情けなさを感じてしまうから嫌なのだ。それをしなければ良いだけの話なのだが、睡眠の欲求に勝った試しがないのだからそれも簡単な話ではないのである。
「(こいつらが出かけた隙を狙うか、少ない方が面倒も減る。)」
「なあ、こいつ味見しても良いか?」
「 ったく、仕方のねえ奴だな。」
「へへっ、さて、どこから味見をするか。」
「(・・・面倒を減らそうと思ったのに、)」
見張りの奴1人だけ倒してそのまま船へと帰還しようとした俺の計画は、また訳の分からない事を言った輩の所為でものの見事に崩されてしまって。全員を倒すのに体力を使うのが嫌でその計画を練っていたのに、これでは強行突破しか道がなくなってしまう。俺に近づいてくる男の顔面を鎖で繋がれた足で蹴ってやろうと構えたそんな時、この家の扉が思いきり開く音と共に豪快に壊される音が響いた。そしてそんな事をしてこの家へとやってきたのは、もしかしなくとも
「 っ!!!」
「・・・エース、隊長」
「お前っ、なんて姿をっ!!」
俺の名前を呼びながらこちらへと視線を移してくるのは、間違いなく俺の隊長であるエース隊長であって。俺の姿を見た瞬間、そんな言葉を紡ぎ出した隊長はすぐに俺の肩に手を置いていた輩へと視線と移して眉間に皺を寄せると同時にとんでもない殺気を放った。
「 から離れろ。」
「ひっ!!」
隊長の殺気にやられたのか、俺に近づいていた男はそのまま後ろの方へと身体を引き摺るように下がっていった。ガタガタと隊長のその威圧に身体を震わせた奴はその場に立ちすくんで動かなくなってしまった。そんな中、エース隊長だけが俺に走って駆け寄ってきてくれる。
「 あいつに触られた以外、何もされてねェか?」
「はい、特には。売るだ何だとは話していましたが。」
「っ、そうか。 まったくお前は、」
「だから1人で行くなってあれほど言ったじゃねェか。」先程とは少し違った様子で眉間にしわを寄せて、そう言って俺をそのまま肩へと担ぐ隊長。「帰るぞ、船に。」 片側に俺を担いだままの隊長がそう言葉を出したから俺が返事をすると背中を優しくさすってくれた。それから全身に感じたのは、先程輩が俺に触れていた時に感じたその殺気であった。
「お前ェら、にこんな事をして無事で済むと思うなよ。」
「っ、あ、」
「 俺の部下に、二度と手を出すな 」
「 火拳!!」 そう叫んだ隊長に、不謹慎ながらも俺の鼓動はドクンと大きく、そして速く、音を鳴らせたのだ。
爆発炎上、事の発端
事の発端は・・・間違いなく俺にあるのだけれど(それにしても、隊長の姿がこんなに、)
title by 赤小灰蝶 / 爆発炎上、事の発端