「・・・どこに行ったんですか。」
そう言葉を紡ぎ出してみるけれど、それに反応が返ってきたらこんなに苦労しない。時間帯も昼に近づいてきたから昼食にでも行ったのだろうか、そのうち会えるだろうと特に急ぐ用もなかったから彼の行きそうな所をゆっくりと見て回る事にする。
「(眩しい、な。)」
それにしても良い天気だ、なんて空を見上げれば、雲1つ無い青空の真ん中に燦々と輝いている太陽が視界に入る。その眩しさに目を細めていると、遠くから聞こえてくるのは探していたその人の声。
「っ!!」
「 隊長? 全く、一体どこに行って っ!!」
見上げていた顔を下ろして真正面を向けば、目の前から走ってくるのは今の今まで探していたエース隊長であって。その声と姿を確認して、安堵感と共に深く息を吐く。それから言葉を紡いでいたにもかかわらず、それを構わずに俺へと突っ込んできて背中に腕を回して思いきり抱きついてくる隊長。
「 隊長、苦しいんですが・・・(い、息が、)」
「どこほっつき歩いてたんだよ!探しに探したじゃねェか!!」
「(・・・それは俺の台詞かと、)」
身長差のせいでぎゅうぎゅうと隊長の胸の中へと押さえつけられてそんな言葉を出されても、呼吸すらもできない状態で返事なんかもちろんできなくて。それから隊長が俺の両肩を掴んできて目を合わせられるように少しだけ身体を離したから、ようやく俺は呼吸を再開させる。そんな俺の様子を気にも留めず(隊長の場合、気付いていないのかもしれないけれど)「もう離れるんじゃねェぞ!だいたい・・・」なんて怒濤のごとく説教をし始めるから困ったものである。
「お前が行きそうな所をずっと探してたっつうのに、何でお前はこんな所にいるんだ!」
「・・・どうりで会えないと思ったら、」
最後に吐かれたそんな言葉に思わず苦笑を漏らしてしまう。どうやら俺も隊長も相手が行きそうな所を探していたようで。それでお互い会おうとしていたのだから、それ自体無理な話であったのだ。お互いがお互いを探していた、なんてと思うと何だか急に心の中で沸き上がってくるものがあって。 「 、聞いてるのか?」なんてしかめっ面をしながら顔を近づけてくる隊長に、気が付いた時には自分からその背中へと腕を回していた。
「なっ、っ!?」
「ふふ、隊長、」
俺が怪我をした時とは違った様子でわたわたとし始める隊長。それに構わず俺は彼の胸へと顔を押しつけその体温と鼓動をゆっくりと感じ取っていると、「おい!いたぞ、こっちだ!!」 なんて言いながらこちらへと走ってくる人達が目に入る。誰を追いかけているんだろう、なんて思いながらその人達を見れば、片手にはおたまが握られていてそして頭にはコック帽が乗せられていて。そんな光景に何度も出会した事のある俺はすぐに彼に声をかけた。
「・・・隊長、」
「お、おう!!な、何だ?」
「・・・食い逃げしたでしょう。」
妙に慌てて返事をする隊長に疑問符なんか付けずにその言葉を放つ。そうすれば隊長は数秒経って漸く「はっ、そう言えば逃げる途中だった!!」 なんて思い出したかのように言ってのけた。というか何でこの人は払わないんだろう、今更のようにその疑問を抱きながらコックさん達がこちらへと向かってくる様子をのんびりと見ていると急に後ろに引っ張られるようにして手を掴まれる。
「、逃げるぞっ!!」
「わっ、何するんですか!俺は食い逃げしていません!!」
よろめく足を何とか立て直して前を行く隊長へと言葉を返すのだけれど、時は既に遅かったようでコックさん達は「待て、お前ら!!」 と完全に俺を共犯にしてしまった。(食べていた客の人数くらい覚えておいてください!)(というかそもそもエース隊長が食い逃げなんかっ!)
「隊長!手を離した方がお互い走りやすいかと思うんですが!」
嫌な方向に覚悟を決めた俺は隊長の隣を走りながら大声で聞こえるように彼にそう話しかける。それを聞き取った隊長は手を離すどころか先程よりも離すまいとするかのように強く握ってきた。
「繋いでねェと、またはぐれちまうだろ!」
訳の分からない行動に疑問符を飛ばしている俺に、逃げていることを至極楽しんでいるかのような満面の笑みで隊長はそう叫んだのだ(まったく、貴方って人は、)(それで毎回許してしまう俺も俺だけれど)
柔らかい日差しに焼かれて
笑みを浮かべる貴方に、俺はどうも弱いらしい。
title by 赤小灰蝶 / 柔らかい日差しに焼かれて