「違ェよ、俺だ!」
「なにとぼけた事言ってんだよ、俺に決まってるだろ?」
上陸した場所が酒の醸造をやっている島だった事もあって、今日も今日とて賑やかに宴をしている白ひげ海賊団。そんな中、聞こえてきたのは酒の所為なのか、やたらと熱が籠もったそんな声。この船にいると、喧嘩、なんてそれこそ宴の最中でなくともどこかしらで毎日行われている事だから、俺はその声を聞いてもまたやってるなあ、なんてくらいの気持ちでなんとなくゆるりと視線を向けたから、
「いいや!俺だっ!!」
「・・・(・・・エース隊長、)」
・・・まさか、そこに我らが2番隊の長であるエース隊長が含まれているとは思わなくて。視線を向けたと同時に響いたその声に、俺は驚くよりも先にため息を1つ吐き出してしまった。遠くから見ても明らかな赤ら顔に余程お酒が回っている事が分かる。喧嘩を止めようかとも思ったけれど、周りのみんなの楽しそうな雰囲気からしてそれほど深刻なものでもないようで、どうしようかと考えていれば、
「止めねェのかよい?」
「 あ、マルコさん。ええと、どうしようかと悩んでいたところで、」
「周りのみんなは楽しそうに笑ってますし、」 あの中にいたのか、少しだけうんざりしたような様子で俺に声をかけてきたのはマルコさんだった。酒瓶を片手に俺の隣へと座り込みながら放たれたその言葉に返事をすれば、なんだか止めて欲しそうな、けれど止めに行くことをやめて欲しそうな、どちらとも取れるような視線を俺に向けてきて、
「?? あの、エース隊長達は何を言い合ってるんですか?」
「・・・誰が1番オヤジを好きかで言い合ってんだよい。」
「あいつらは兄弟喧嘩が趣味なのかと思えてくるよい、ったく。」 その視線に、一体エース隊長達はどんな言い合いをしていたのかと気になって質問を投げかければ、返ってきたのは呆れるようなため息と共に吐き出されたそんな言葉で。
「・・・ええ?」
予想もしていなかったその答えに、俺はいつも以上に気の抜けた声で反応を返してしまう。親父さんを誰が1番好きか、それが理由で?思いもしなかったその答えに一瞬驚いたのだけれどすぐに俺は納得するように「ああ、」なんて声を漏らす。そうか、あれだけ隊長達がやけに熱くなっていたのは親父さんが理由だったのか。そう思うと、俺の事ではないのに何故だか意識しないうちに顔が緩んでいくのだから、(本当にどうしようもない、)
「 お前はどう思うんだよい?」
「え? どう思う、ですか?」
「あァ、言葉が足りなかったな。」
「自分が1番オヤジを好きだと思うかって意味だよい。」 その理由を訊いて、俺が喧嘩を止めにいってもきっと止まらないだろうと判断してそちらへと傾けていた身体を戻して座り直していると、マルコさんがそんな言葉を紡いできた。1度目はいまいち意図が掴みきれなかったけれど、二言目のそれで俺はようやく理解して、・・・1番、親父さんを好き、俺が?
「あの、1番なのかと言われると、よく分からない、ですけど、」
「 ほう?」
理解はしたのだけれど、マルコさんのその言葉を頭で繰り返しても、その答えがすぐに俺の口からは出てこなかった。たどたどしく零れた言葉に、続きを促されるようにマルコさんが頷いてくれるから、俺はそのまま考えるように言葉を紡いだ。
「1番や2番とか、比べること自体が、その、よく分からないんです、」
どのくらい好きかと訊かれても、たぶん俺は上手く答える事ができない気がする。幼い頃から、親父さんに息子と呼ばれるようになってから・・・いや、親父さんと初めて視線を交わしたその時から、俺にとって、親父さんは、
「親父さんは、 俺の全てで、唯一の人、だから、」
この広い海のどこを探したって、これほど愛しいと思える人はいないと断言できる。親父さんの為であったら、俺のできうる限りの事を投げ出せるくらいに、それこそ自分の命だって惜しくない。これを言うと親父さんは顔を顰めるし、実際にそれが原因で怪我をしてしまうと親父さんは悲しそうな顔をするから、なるべくしないようにはしているのだけれど。
「・・・全て、 親父さんの全てが愛しいと思う、から、」
いつも俺の頭を撫でてくれるあの大きな手も、俺達家族を守ってくれるあの広い背中も、親父さんに顔を向ける度に思わず見てしまうあの綺麗な瞳も、可愛いと、愛しい息子と言ってくれるあの優しい声も、楽しそうなあの笑い声も、俺なんかの事を心配してくれるあの優しさも、寛大で、偉大で、温かくて、俺に知識も感情も家族も全てを教えてくれた親父さんのことが、俺は、 みんなの中で1番かと言われるとやっぱり分からないけれど、
「 好きで、愛しくて、仕方がないんです。」
どれだけ行動で、言葉で表現しても足りないくらいに、ふとした拍子にすぐに溢れてしまうくらいに、親父さんの事を好きだという事だけは、自信を持って言うことができる。こうやって、親父さんの事を考えるだけで顔はどうにも緩んでしまうし、身体中が温かくなっていくのを感じた。
「 す、すみません、上手く言葉にできな、・・・マルコ、さん?」
ぽつり、ぽつりと思うままに口を動かしてしまった事に今更気付いてマルコさんに謝ろうと顔を上げると、マルコさんはぽかんとした顔をしていて。・・・そして、視線を甲板に向けていたから気付かなかったのだけれど、何故だか周りにいた仲間のみんな、それに先程まで言い合いをしていたエース隊長までも、こちらにぽかんとした顔を向けている事に気付いて、
「・・・え、え??」
あれだけ賑やかだった宴なのに、しんと静まりかえって皆が俺の方を見ている事に、俺は訳が判らず、間抜けな声を出して辺りをきょろきょろと見回してしまう。知らないうちに俺は何か気に障るような事をしてしまったのだろうかと、不安になり始めた、そんな時、意識を戻したらしいマルコさんが優しく俺の頭に手を乗せてきて、ゆるりと笑みを浮かべた。
「 まったく、お前にはホントに敵わねェよい。」
「?? あの、マルコさん?」
「これだけおおっぴらにオヤジに告白されたんじゃ、なァ?」
「 こ、くはく、・・・!!!」
マルコさんが放った言葉を完全に理解した時には、俺はもうこれでもかというくらいに顔を赤くしていたに違いない。マルコさんと同じ顔をしてみんなが俺を見ていると言うことは、つまり、俺の紡いだ言葉が聞こえていたという事で、それほど大きな声で話していたつもりはないけれど、でもこの、いつ始まったのか俺には分からない、宴に似つかわしくない静まりが俺が話していた間ずっと続いていた、のなら・・・、
それは、つまり・・・、 俺の声が、他の誰でもない、
「 、」
「っ!!(や、やっぱり、!)」
宴の最中でも聞き逃すはずのないその声が静かな宴の中に響き渡って、俺はビクリと情けないくらいに身体を震わせた。・・・そう、みんなにも、あれだけ離れたところにいたエース隊長にすら聞こえていたという事は、それ程離れていない所でお酒を飲んでいた、本人にも、
「グラララ、そんなに驚かなくても良いじゃねェか。」
「う、あ、え、 お、親父さんっ、 う、あの、その、 今のはっ、!」
名前を呼ばれて、さらに手招きまでされては、どれほど羞恥に駆られたとしても、親父さんの元に行かない訳にはいかなくて。まさか、まさか親父さん本人に聞かれていたなんて思ってもいなかった。未だにじわじわと俺を攻撃してくる羞恥に俺は顔に熱を集中させてしまう。(冗談ではなく本当に、穴があったら入りたい・・・、)
「(・・・うう、親父さんが聞いてたなんて、)」
そんな顔のまま、マルコさんにまでくつくつと笑われながら背中を押されて、親父さんの近くへと駆け寄る。そうすれば、続くようにして紡がれたその言葉に、俺は弾かれたように顔を上げて、なんとか言葉を紡ごうと口を開いたのだけれど、情けないくらいに言葉が1つも浮かんでこなくて。だって、あんな、あんな言葉足らずな、拙いものを、
「え、う、親父、さん?」
「何だ、俺はずいぶんと信用されてないみてェだな?」
「?? っ!そ、そんな事ないですっ!!」
あんな纏まりのない稚拙な言葉を親父さん本人に聞かれていた事が恥ずかしくてしょうがなくて、顔を隠すように思わず下へと向けてしまっていると、ゆっくりと親父さんの手が俺の頭へと降りてきていた。それに反応してゆるりと顔を上げれば、親父さんからそんな有り得ない言葉が紡がれて、俺は慌てて思いっきり首を横に振ってそれを否定する。一瞬、返事が遅れてしまったのは、何が理由で親父さんがその言葉を紡いだのかが分からなかったからで、
そんな俺の反応に、嬉しそうに笑みを浮かべた親父さんは、
「 心配しなくとも、お前の言葉はちゃんと俺に伝わってるぜ?」
「!!」
「グラララ、伝わらねェはずがないだろう?」
「十分すぎるくらいに、伝わってるさ。」 俺の大好きなその声が身体中に響き渡って、大きなその手は俺の頭を、頬をゆるりと滑って撫でてくれて、海のように綺麗なその瞳を俺に向けてくれて、
「息子が俺の事を愛しいと思ってくれてるように、親の俺だって息子を愛しいと思ってるんだからな。」
「 俺も、愛してるぜ。」 なんて、いつものように、俺を嬉しさでいっぱいになるような、愛しさを溢れさせてしまって我慢できなくなるような言葉を続けたんだ。(・・・ああ、もう、本当に、 俺は、この人のことが、)
手のひらに収まりきらない愛
・・・あー、そうだよな。言い合いをしてる時は思わず熱くなっちまって気付かなかったが、 には、敵わねェだろい? ・・・ああ、全くだ。 も恥ずかしがるとこがおかしいよな。本人に聞かれて恥ずかしがってんのかと思ったのに、その言葉が拙すぎた事に恥ずかしさを覚えてんだもんな。 まァ、それがだろ。普段からオヤジに好きだ好きだって連呼してるし。 オヤジもそんなが可愛くて仕方ねェみたいだけどな。 ああ、違いねェ。
requested by 蓮さま
オヤジ大好き大討論会!というおいしすぎるリクエストをいただいて、ふふう!と異様な程にテンションを上げてしまった結果、こ、こんな長文になってしまいました・・・!orz よ、読みづらくなってしまってすみませんっ。そしてオヤジがあまり出ていないという申し訳ない事になってしまってっ。いやもう謝ってばっかりなのですが、愛、愛だけはこれでもかというくらいに詰め込みました・・・!(言ってろ)
いつものようにオヤジ大好き主人公で完全に私しか得していないんじゃないかと思われるような短編になってしまいましたが、す、少しでも楽しんでいただけましたらこれ幸いでございます!最後になりましたが、素敵なリクエストをありがとうございました!
オヤジ大好き大討論会!というおいしすぎるリクエストをいただいて、ふふう!と異様な程にテンションを上げてしまった結果、こ、こんな長文になってしまいました・・・!orz よ、読みづらくなってしまってすみませんっ。そしてオヤジがあまり出ていないという申し訳ない事になってしまってっ。いやもう謝ってばっかりなのですが、愛、愛だけはこれでもかというくらいに詰め込みました・・・!(言ってろ)
いつものようにオヤジ大好き主人公で完全に私しか得していないんじゃないかと思われるような短編になってしまいましたが、す、少しでも楽しんでいただけましたらこれ幸いでございます!最後になりましたが、素敵なリクエストをありがとうございました!
title by Lump / 手のひらに収まりきらない愛(愛5題)