・・・これだから、彼とお酒を交わすのは嫌なのだ。



「フフ、 君は酒が入るとずいぶんと大胆になる。」


「私の知らない間にどれだけ飲んだのやら。」 隣で俺を見ていたくせにそう白々しく尋ねるのは、いつもと同じように俺の家へと連絡も入れずに訪問してきたレイリーさんで。彼が持参した酒が強かったのか、いつもよりも酒の周りが早かったのかは分からないけれど、・・・俺が酔っているのは確かであって、


「 ん、 レイリー、さん、」


・・・そう、酔っているから、こんな状況になっても文句の1つも言わずに、差し伸ばされている手に擦り寄っているのだ。彼の後ろに天井が見えて彼との距離はもうないに等しい、なんて、そんなふざけた状況だというのに、いつの間にかふわふわと心地良い浮遊感を覚え始めた身体は妙に熱くて、けれどこの状況に陥っても何とも思わなくなってしまった脳内も、身体も彼の熱を求めてしまっていた。


「ふ、 うあ、」


それからゆるりと近づいてきた彼のそれが俺の唇へと重なった。触れている動作はゆったりとしているのに何故か全てを食い尽くされてしまうようなそんな感覚に襲われる。既にかなりの量の酒を飲んだはずなのに、絡まる舌から伝わる酒の味を感じるや否や、さらにそれを求めて追ってしまう。


「フフ、酒に呑まれた君はずいぶんと可愛くなるものだな。」


「ああ、もちろん、普段の君も可愛いところはあるんだがね。」 艶めかしく響くその声にひどく楽しそうな色もしっかりと含ませてそんな言葉を彼は放ってきた。いつもの俺ならふざけた事を言わないでくださいなんて呆れかえるだろうその一言、けれど今の俺には内容云々よりも彼の声の音色ばかりが耳に心地良く響いて残ってしまって、


「  、」


それを知ってか知らずか、レイリーさんは唇を離すと、それをそのままゆるりと俺の耳元へと寄せてきて俺の名をゆっくりと紡いでくる。鼓膜から脳内に伝わって、身体に響いて染み込んでいく。全神経に行き渡るその声に思わず身震いすれば、喉奥からの笑い声がさらに追い打ちとなって耳へと流れ込んできた。その声すらも、今の俺には、


「 っ、も、 みみ、もとでっ、」
「ん? 耳が、どうかしたのかね?」


なんて言ってとぼけるくせに、言ったそばから耳を甘噛みしてくるものだから、本当に始末に負えない人である。止めろと言いながらも反応してしまう自分の身体に嫌気が差してくるけれど、酒にやられてしまっている俺が自分のそれを抑える事なんてもちろんできる訳もなく、


「フフ、ずいぶんと赤くなってはいるが。」


・・・それすらも、全てを知っている上で、彼は1つ1つ行動を起こしているのだ。こうすれば、俺はこう反応するだろうとか、こう言葉を返してくるだろうとか・・・何もかも、彼はきっと、


「・・・全部知ってて、してるくせに、」
「フハハ、 はて、何の事やら。」
「 また、しらばっくれてっ、 ちょ、まだ話しっ、んっ、」


何とか脳内の奥底にあった理性に縋り付いて、レイリーさんに悪態をつこうと口を開く。けれどそれすらも彼は戯れのように身をかわして、俺の首筋に手を這わせて唇を落としてくるから、俺はその憎まれ愚痴すらも最後まで言えずに、また自分のものなのかと信じたくもないそんな上擦った声をあげてしまって、


「 フフ、すまない。これだけ普段と違う愛らしい姿を見せられて、」


「我慢できる程、私も人間できていないものでね。」 そんな事を言いながら、確信犯であるこの人は俺のばらけてしまった髪の毛をやけにゆっくりと耳へとかけると、再度俺の口元へと唇を近づけてきた・・・けれど、それは触れる寸前で止められて、


「  、」


なんて、心地良いその声で俺の名を呼ぶものだから、俺が何とか引っ張り出してきていた理性はいとも簡単に融けてなくなってしまって、その音色を震わせているその唇へと自ら寄せていってしまうのだ。

響く声に酔わされる

・・・そして翌日、その人の隣で、ひどい後悔と共に俺は目覚める事になるのだけれど。

requested by 黒豆様
渋い大人の魅力・・・!という事で悶々と妄想をした結果、私の中で、「大人(というかレイリーさん)の魅力=あのいつも余裕な感じで迫られたらもう堪らんよな・・・!」というまた個人的妄想が駄々漏れた結果に辿り着いてしまいましてorz マルコの時もそうですが、せっかく素敵なリクエストをいただいたのに、ほっとんど活かせていない感がもう全面に押し出されてる気がしないでもないですが、マルコさんの時と同様、あ、愛だけはっ!(もういいよ)
さ、最後になりましたが、レイリーさんとマルコ、2つもリクエストをしてくださってありがとうございました!とてもとても楽しく書かせていただきました!黒豆さまが少しでも楽しんでいただけたのでしたらこれ幸いでございます!