「ん?何だ、足が痛むのか?」
今、俺は親父さんの肩に乗せてもらって甲板を移動するという、失礼極まりない、とんでもない事をしでかしてしまっている。こんな事をしてしまっている自分が情けなくて、そして親父さんに申し訳なくて、ひどく動揺しながらもなんとか降ろしてもらおうと親父さんに言葉を紡ごうとするのだけれど、親父さんは俺のそんな動揺を知ってか知らずか、俺の足の怪我を心配してくれて、
「あ、足は大丈夫です、けどっ、そ、そうじゃなくてっ、」
親父さんの言葉に嬉しさを感じてしまいながら返事をするのだけれど、今いる状況をすぐさま思い出した俺はまた必死に親父さんに降ろしてもらおうと言葉を発しようとする。・・・なんて、そんな状態が何度か繰り返されていた。
・・・言い訳をするわけではないのだけれど、でもこんな状態になっているのには深い、深い訳があるのだ。・・・いや、深いというよりはただ俺自身のミスに過ぎないのだけれど(・・・本当に馬鹿なことをした。)
その事件が起こったのは昨日の夜の事だった。
頭に血が上っていて、今自分がどういう状態にあるのかなんて全く分からなかった。ふと、視界に入る人物へと目をやると、徐々に目の前に倒れているのが先程無謀にも白ひげ海賊団に喧嘩を売り込んできた輩だという事と、そいつが何やらふざけた事を口に出した事、そしてその言葉に俺の理性がぶちりと切れたのだという事を思い出す。
「(・・・安い挑発に乗ってしまった。)」
今思えば、ひどく稚拙な挑発に乗ってしまったと思う。俺を怒らせる事が目的だという事があからさまに分かるようなそれだったのに、けれど俺はやっぱり我慢する事なんてできなかった。俺の全てで、大好きで仕方のないあの人の事を悪く言うだなんて、そんなふざけた事をされてしまえば、
「(・・・駄目だ、思い出したらまた腹が立ってきた。)」
周りの皆はまだ戦闘の最中なのだからとその感情を何とか抑え込もうとするのだけれど、やっぱり心の奥底から沸き上がるそれを抑えきれなくて、横から襲いかかってきた敵に感情のままに思いっきり蹴りを入れてしまった。この時からも、もう既に足はおかしくなっていたのだろうと今更ながらに思う。
「(・・・親父さんは、)」
そうして俺は理性を取り戻す前に周りにいた敵を倒してしまって、ようやく一息ついて少しだけ冷静さを取り戻すと、くるりと体を回転させてその姿を探し始めた。親父さんの事だから苦戦なんてしている訳ないのだろうけれど、自分の視界に親父さんを映したかったのだ。すると、すぐにその大きな背中を俺の目はしっかりと捉えたから、俺は現金にもゆるりと安堵の息を漏らした・・・のも、束の間、
「・・・っ!」
ある方向から親父さんへの殺気が迸ったのを俺はすぐさま感じ取った。素早く方向を特定してその敵を倒そうと動こうとしたのだけれど、引き金を引く前に彼を倒すのは不可能だということも俺は直感で悟る。そして、それなら、と俺が瞬時にとった行動は、敵に向かうのは向かったのだけれど、
それは銃口の目の前で、
「っ、う、(これ、なら!)」
「「っ!」」
「・・・(親父さんに銃弾が当たる事は避けたものの、)」
昨夜俺がとった行動は、自分で銃弾を受けてそのまま敵を倒す、というものだった。そこまでだったら、(仲間のみんなは止めろと言うけれど)普段からやってしまっている事なのだ。だから今回足に受けた怪我も軽傷で済むだろうと予測をつけていたのに、
「(・・・まさか歩けなくなる程の怪我なんて、)」
銃弾を受ける前に加減もせずに敵へと散々蹴りを入れていた所為で、どうやら骨にまで異常を来していたようで。気づいた時にはすとんと甲板に腰を落としてしまう程にまでなってしまっていたのだ。情けないというか、ただの間抜けというか・・・自分の足の異常に気づけないだなんて、(・・・恥ずかしいにも程がある)
そうして負った怪我をドクターに治療してもらい、「良いか、傷口が塞がるまで絶対動かすなよ。絶対だからな。」なんてまるで子供に言い聞かすような声でしっかりと忠告をもらった俺は松葉杖で歩かされる羽目になってしまったのだけれど、そんな俺の姿を見た親父さんはそっと俺を抱えあげたかと思えば、「さて、」
「息子をしっかり世話してやらねェとな。」
なんて笑みを浮かべながらそんな言葉を俺に紡いでくれて・・・今、この状況に至る訳である(・・・本当に情けない。)
「あの、親父さんっ、自分で歩けますからっ、」
「グラララ、あんなたどたどしい歩き方でか?」
「あんな歩き方だとすぐに転んでそれこそ傷口が開いちまうと思うんだが?」 そんな事を言われてしまい、俺は「う、」なんて言って言葉に詰まってしまった。どうも松葉杖に慣れなくて何度か足先が松葉杖に当たってしまって転びそうになったのだけれど、どうやらその姿を親父さんに見られていたらしい。どうにか言葉を返してなんとか親父さんの迷惑にならないようにと思うのだけれど、でもだんだんと親父さんのその申し出を断る理由が思いつかなくなってしまって。
いや、親父さんの申し出が嫌とかもちろんそんな事ではないし、むしろ俺の事を心配してくれるなんてそんなに嬉しい事はないと思っているのだ。不謹慎だとは思うのだけれど俺のことを親父さんを含め、仲間のみんなが心配してくれると思うだけで、顔が緩んでしまうくらいに。
・・・けれど、今回ばかりは理由が理由だけに(本当に申し訳ないというか、恥ずかしいというか。)
「・・・ったく、痛々しい姿になっちまいやがって、」
「、おやじ、さん?」
平行線の会話をしているうちに、どうやら親父さんの座るいつものその場所に着いたらしい。親父さんは肩から俺を自身の隣にゆっくりと降ろすと、突然、そんな言葉をぽつりと呟いた。何でそんな苦しそうな声をするのだろうと、ふと見上げれば、俺の視界には声と同じような顔をした親父さんが入ってきた。けれどその色は一瞬で消えて、顔に浮かんだのはひどく、優しい、
「俺のために、負った怪我だろう?」
「!ち、違うんですっ!その、俺が先陣を切ったのは・・・確かに親父さんを悪く言われたから、ですけど、」
「ここまでひどい怪我をしたのは、その、俺の不注意というか、俺が至らない所為で・・・」 親父さんに嘘はつけないから正直に言おうとしたけれど、やっぱり自分の不甲斐なさを親父さんに言うのはひどく恥ずかしくて、顔は下を向き、だんだんと声も小さくなってしまい、最後の方は親父さんに聞こえるか聞こえないか分からないような声になってしまっていた。・・・けれど、親父さんはそんな俺の頭をゆるりと撫でて、「グラララ、」
「お前が俺のために怒ってくれたっつう理由だけで十分さ。」
「それに、愛しい息子の世話をするのも親の仕事ってモンだろ?それとも、愛しい息子は俺にその仕事をさせてくれねェのか?」 そう言う親父さんの顔も声もひどく楽しそうで、放った言葉も少しずるい訊き方だったけれど・・・でも、そう言えば俺が断れない事を親父さんは知っているから、(・・・ああもう、敵わないな、)
「 なァ、?」
・・・それを知ってて、親父さんのその言葉に甘えてしまう俺も俺なのだけれど。
幸せの代名詞と言えるもの
でもやっぱり、親父さんにそう言われてしまえば、・・・たとえ知っていても、
requested by まめ様
え、えらく長くなってしまってすみませんでしたっ!し、しかも二部編成というふざけた事になってしまって・・・! 怪我の経緯から書こうと気合い入れて書いた結果がこれでございます。親父さんがお世話をしてくれるという美味しすぎるシチュエーションまでもっていけませんでしたorz これではいかん!というわけでございまして、ここまででも十分長ったらしいというのに、さらにその2まで続くという事になってしまいました。本当にすみませんっ。し、しかしながらとても楽しく書かせていただいております!素敵なリクエストをありがとうございます!
え、えらく長くなってしまってすみませんでしたっ!し、しかも二部編成というふざけた事になってしまって・・・! 怪我の経緯から書こうと気合い入れて書いた結果がこれでございます。親父さんがお世話をしてくれるという美味しすぎるシチュエーションまでもっていけませんでしたorz これではいかん!というわけでございまして、ここまででも十分長ったらしいというのに、さらにその2まで続くという事になってしまいました。本当にすみませんっ。し、しかしながらとても楽しく書かせていただいております!素敵なリクエストをありがとうございます!
title by white lie / 幸せの代名詞と言えるもの(ぬくもり五題)