「あの、クロコダイルさん??」
「 ・・・何だ。」


クロコダイルさんが会社へとやってきた、なんて珍しいにも程がある、俺にしたらちょっとした事件にも入るんじゃないだろうかってくらいの出来事があったその後、俺はクロコダイルさんに買い物に寄っても良いかと訊ねて、手を引かれるままにいつも行くスーパーへとたどり着いた訳なのだけれど、


「(・・・不機嫌??)」


会社からずっと無言で俺の隣を歩いているクロコダイルさん。いや、無言なのはいつもとそんなに変わりはないのだけれど、その纏っている空気というか、あからさまにいつもとは違うそれらがクロコダイルさんの周りを包んでいて。そんなに帰りが遅かっただろうか、いや会社に来る程までにお腹が減っていたのかも知れない、なんて俺が声に出さずにそんな事を考えていれば、隣から深々と盛大なため息が吐かれて、


「てめェは、何でそう一見強固そうなのに、懐に入れたらこうも無防備なんだ。」
「・・・クロコダイル、さん??」


放たれた言葉をいまいち理解しきれなくて、疑問符を頭の上に浮かばせながら彼の名前を口に出す。無防備・・・って、何がだろう? どうやら俺はえらく間の抜けた顔をしていたらしい。こちらへと視線を向けていたクロコダイルさんから、「そのふぬけた面をどうにかしろ。」 なんて頭をぐしゃぐしゃと撫でられながら言われてしまった。


「・・・てめェ、俺が来なかったらどう対処してたんだ。」
「え?  あ、ああ、あの、ちゃんと断ろうとは思ってましたけど、」
「微塵も押し切れるようには見えなかったがな。」
「う、いや、 その・・・」


端から見れば、兄と弟くらいに見えるかもしれないけれど、話しているのは飼い主とペットであって。さらに言えば、怒られているのが飼い主の方である訳で。・・・飼い犬に怒られる飼い主って、なんて情けないやら何やらで、けれどクロコダイルさんから放たれる言葉はすべて当たっているのだから、何も言い返す事ができなくて、(・・・確かに、あの時クロコダイルさんが来てくれていなかったら、俺はたぶん、)


「   ・・・だから、てめェは放っておけねェんだこの駄目飼い主。」
「 え、?」


最後の最後に、何だかひどい言葉を吐かれた気がしないでもないけれど、それよりも、俺の耳へと、脳内へと響いてきた言葉に、俺は徐々にゆるりゆるりと頬を緩ませてしまって、抑えきれなくなって、(駄目飼い主とか言われるけれど、それでも彼が俺の事を、)(・・・少しばかり、分かりにくい表現方法ではあるけど、)


「(可愛い、なんて言ったら拗ねてしまうし、) クロコダイルさん、」
「  気持ちの悪い顔を晒してんじゃねェ、・・・さっさと買って帰るぞ。」
「ふふ、はい。」


具材を詰め込んだカゴを片手に、俺よりも大股で、けれどいつもよりも遅いそのペースを保ってくれるクロコダイルさんの隣へと、俺はゆるりと駆け寄っていったのだ。(ふふ、これでは本当にどっちが飼い主なんだか)

なつくとたのもしいそんざいです 後編

我が家の子は、少しひねくれたところがありますが、とても愛おしくて仕方のない子なのです。



あ、甘くなったの、か??(知りません)
す、素敵なリクエストをありがとうございました!
requested by 匿名様


title by リライト / なつくとたのもしいそんざいです(猛獣の飼い方10の基本)