「なあ、、良いだろ?この通り!!」
「・・・そう言われても、だな、」


彼と会って、もうかれこれ1ヶ月は経ったんじゃないだろうか。今まで時間がある時だけはこうして友人の頼みだからと了承していたけれど、彼と会ってからはそうもいかなくなった。いや、彼に一言言えば許して・・・ああいや、それも定かではないけれど。と言うよりも、たぶん、彼が、とか何とか言う前に、俺がすぐに自宅へと帰りたがっている、と言った方が正しいのかも知れない。


「頼むって!今日が来るって約束しちゃったんだよ!!」
「いや、だから・・・え?」


そんな今日も真っ直ぐ家へ帰ろうとして定時に会社を後にしようとしていれば、友人にそれが見つかって、こうして飲み会へと誘われるに至ってしまって。友人の頼みに弱いという自覚はあるから、こうして頼まれないうちに帰ろうとしていたのだけれど・・・そんな事をしているうちに何分経ったのだろうか、ビルの前でこうして押し問答を繰り返していれば、何故だか、見覚え、・・・いや、見慣れた姿がそこに、


「ったく、帰りが遅いと思ったら、・・・案の定か、てめェという奴は、」
「   クロコダイル、さん?」
「え、は?だ、誰、??」


家で待っているはずの彼の姿に動揺している俺を余所に、つかつかと俺の方へとそんな言葉を放ちながら近寄ってくるクロコダイルさん。俺の隣にいた友人も初めて見るだろう彼の姿に立ちつくすしかできないでいて。(もちろん、耳やら尻尾やらは引っ込んでいるけれど、)


「え、あ、 クロコダイルさん? な、何でここに、」
「何で、だァ? てめェが遅ェから、・・・まァ良い、それより」
「?? クロコダイル、さっ!?」


現状把握が未だ出来ていない俺へと距離を詰めたクロコダイルさん。今更ながらに、なんて背の高い人・・・犬なんだ、なんて思いながら首を上へと傾けて彼を見やる。そうすれば、言い出していた言葉を止めたクロコダイルさんは、急に俺の後頭部を片手で思いきり掴んで、自分の方へと引き寄せて、


「 わ、 う、」
「おい、 そこのガキ、」
「へ、お、俺?」


顔がクロコダイルさんの胸元に埋められてしまった所為で、彼の顔を見る事はできないけれど、その発せられる声からは何となく不満そうであるらしい事は窺えて。そのままでも恥ずかしい部分はあったけれど、力やら身長やらでその場所から抜け出せない事は分かっていたし、抜け出してしまえば彼の機嫌がさらに落ちるんじゃないかと思ったから、埋めたまま、彼の声と、不思議そうに言葉を紡いだ友人の声を聞いていれば、(・・・というか今、クソガキって、)


「俺のモンに手ェ出すとは良い度胸じゃねェか。」

なつくとたのもしいそんざいです 前編

・・・俺のものって、 あの、クロコダイルさん、それ、逆だと、(まあ、良いけれど、)(・・・良くない、のか?)



す、すみませんっ、甘くならなかったので、前後編になってしまいましたっ!!
素敵なリクエストをありがとうございます!
requested by 匿名様


title by リライト / なつくとたのもしいそんざいです(猛獣の飼い方10の基本)