「おいおい、海賊さんよォ!ここは俺達の縄張りなんだが?」


補給のために島へ上陸しようとした矢先に、そこを縄張りにしていた山賊だかなんだか分からないけれど、あからさまに面倒くさそうな輩達が無謀にもこの船へとぞろぞろとやってきて。この船を見ても恐怖を抱かない強者なのか、ただ単に気付いていないだけなのか、いかにもそれらしい笑みを浮かべながらこちらへと1対1の戦闘を挑もうとしている彼ら。まあ後者に違いないんだろうな、なんて暢気な事を思いながら仲間のみんなと一緒になってぼーっと彼らを見ていれば、彼らの長らしい人と目が合ってしまったような気がして・・・(・・・やってしまった。)


「それじゃあ、そのひょろいのに相手をしてもらおうかっ!!」
「・・・(何で俺が、)」


けれど、既にやってしまったことはもう元には戻らなく、長らしいその人がそんな言葉を放てば、周りにいた仲間達は「ははっ!!ご指名だぜっ!行ってこいよ!」なんてさらに追い打ちをかけてくる始末で。けれど1対1を申し込まれて断るほど、俺もふぬけた人間ではないつもりだから結局はやし立てられるままに船員の中で最初にこの地を踏む事にした。


「ハハハっ!逃げてるだけじゃ俺は倒せねえぞっ!!」
「・・・そうですね。」


準備運動をしないままに戦闘に入ってしまったから、柔軟も兼ねてゆるゆると相手の短剣を避けていれば、そんな言葉を相手が放ってきて。後ろから見ている仲間のみんなも「ー、準備なんてもう良いだろ!早くっ!!」なんて他人事のように面白がってそんな事を言ってくる。人の気も知らないであの人達は、なんて思いながら、そろそろ始めるかと思っていたそんな最中、目の前にいる輩がとんでもない事を言葉にしてくれるものだから、俺の脳内で何かの線が盛大に切れる音がしてしまった。


「こりゃ、船長の器も知れてるんじゃねえ・・・グハッ!!」
「っ、おい!!」

「・・・今、何かふざけた事を言いましたか?」


その何かの線が切れると同時に、相手へと手加減なしに蹴り出してしまった自らの足。蹴られて当然なその男は仲間の元へと勢いよく跳んでしまったのだが、それでも俺の中の線が修復される事はなくて。面白がっていた後ろの方からも「あーあ、の奴が切れちまった。」やら、「おおっ、やっちまえ!」やらと多様な声が耳に響いてきて。


「俺の事をとやかく言うのは別に良いですけれど、」
「ひっ、」
「俺は、仲間や親父さんの事を悪く言った人に容赦できるような、器用な人間ではないですよ。」


「ふざけるのも大概にしてくださいよ?」 腰が徐々に引いていた彼らへと視線を合わせて笑みを浮かべながら、俺は冷たくそう言葉を放ったのである。それからの事は、まあうん、多くは語らないでおくけれど、とりあえずとんでもない事を言った彼ら全員は気絶したりだ何だと全員半死状態になった事は確かであろう。


**


彼らを相手した後、ばれるとやっかいな人達が来る前にさっさと部屋に行って寝てしまおうと俺はそそくさと船へと戻っていって、「、やっぱさすがだなお前!」なんて声をかけてくれる仲間達に手を振りながらも確実に前へ前へと進んでいたはずだったのだけれど、俺が全てを片付けるよりも先に、事の始まりを聞いていたらしくドタバタと慌ただしくこちらへと走ってくるその聞き慣れた音が嫌にでも耳へと入ってきて(・・・遅かった。)


っ!!」
「う、わっ、 エース、隊長。」


俺の前で止まるのかと思えば、そのままの勢いで俺へと突っ込んできたのは俺の隊の長であるエース隊長であって。ぎゅうっと締め付けんばかりのそれで俺の背中へと腕を回しながら「怪我はねェのかっ!?お前は何でそうっ!!」 なんて心配してくれているその声色で俺にそう言葉を紡ぎ出してくれた。それは俺にとって心地の良いそれなのだけれど、できればそんな心配をかけさせたくないのが俺の本音であって(だから、気付かれないうちに部屋に戻ろうとしたのに。)


「大丈夫ですよ、隊長。怪我なんてしてません、それより隊長、俺、息が・・・・」
「本当なんだなっ!?お前はいつもそう言って隠そうとするから、」
「本当ですよ、今回は嘘ついていませんって。それで隊長、そろそろ腕を・・・(い、息が、)」

「エース、お前ェの部下が苦しそうな顔してるよい。」


そんな彼の腕の中でそろそろ息が苦しくなってきた俺は何とか酸素の確保をと間を作ろうとするのだけれど、それも中々思うようにいかなかった。隊長が心配をしてくれたという嬉しさもあって、彼の背中へと腕を回して背中をさすっていたのが原因なのか、エース隊長はさらにこれ以上ないくらいに身体を密着させてきて。それでもやっぱり引き剥がす事なんてできないままに、どうやって呼吸確保をしようかと考えていれば、後ろから声がしたかと思えば俺とエース隊長の間にはようやく空気が入り込んできて。


「   マルコさん、」
「怪我はしてねェかい?」
「なっ、おま、マルコ!また俺の部下をっ!!」


後ろから聞こえたその声に振り返ってみれば俺の呼吸を確保してくれたのはやっぱりマルコさんだったらしく。ぽんぽんと俺の頭を撫でてくれる心地よいそれを受けながらそう聞いてくる彼に緩み出す頬を抑えきれないままに頷けば、マルコさんも俺に笑みを浮かべてくれて。


「なら、良いが。オヤジのことでああなったのは仕方がねェが、あまり熱くなるなよい。」
「う、  見てたんですか?」
「あァ、ひょろいなんて言われる所からだよい。」
「・・・ほとんど全部じゃないですか。」


親父さんが絡む戦闘の度に言われる忠告を今回も例に漏れず言われてしまって。毎回どうにかならないものかと考えてはいるのだけれど、どうもその対処をする前に足やら手やらと本能的に出してしまっているらしく。直さないとな、なんて自分のその癖に分かり易いくらいに落ち込んで視線を落としていれば、「まったくお前ェは、」 なんて優しいその声と共に、俺の額へと柔らかいそれが降ってきて


「戦闘自体は悪くなかったよい。ずいぶんと上達してる。」


「そんなに落ち込むなよい、ちゃんと見てんだから。」 俺の耳元で、そんな言葉を囁いてくれるマルコさん。その声もそうだけれど、その言葉の意味も俺の脳内がそれを理解し始めると同時に俺の顔はこれ以上ないくらいにしまりのないそれへと変わっていってしまって。気付いた時には目の前にある、その愛しい胸へと思いきり飛び込んでしまっている訳で(だって、憧れている人達に、愛しいその人にそんな事を言われたら、)


「ふふ、マルコさん。」
「 ったく、現金な奴だよい。」


俺の飛び込みも難なく受け止めてくれたマルコさんはそう言いながらもその顔には笑みを浮かべてくれていて。嬉しさの余りその緩みきってどうにもならない顔を彼の肩に顔を埋めて隠していれば、マルコさんは再度俺の耳元へとその唇を持っていって、「まァ、戦闘が良かったのも、ずっと見てるってのも嘘じゃねェが。」 なんて、また俺の顔に熱を集中させるような事を平気で囁いてくるのであった。(ずっと、見てるって・・・)

広がり行く、空

マルコ、さん・・・  ん?俺は事実しか言ってねェが?   う、また貴方は・・・      ま、マルコに、俺、俺の部下がっ!!!  ちょ、エース落ち着けよっ!  そうですよ、エース隊長っ!   うるせェ!!離せっ、俺の、俺のが、マルコに攫われちまうっ!!!   それならもうとっくに攫われっ(ガンっ!)   馬鹿っ、火に油注ぐような事言うんじゃねー!ああもうっ、ほらエース!落ち着けって!!



素敵なリクエストをありがとうございました!
requested by 黒木ひろ様

title by Seventh Heaven / 広がり行く、空