読書をしていたら、の後輩であるシリウスがやってきて隣に座り一緒に休憩時間を過ごす。とシリウスは授業中一緒にいることは出来ないし、会う時間が同学年ほど多くない。それは年が違うのだから至極当然の事であるのだが、頭では分かっていても、少しでも側にいたいと思ってしまうのだ。そんな事ばかりを言っていたためか、こうしてを見つけ休憩時間をともに過ごせるようになったのは友人のおかげなのである。(大量のお菓子を買わされた後日談があるとかないとか。)
まあ、そんな友人のおかげで夜以外にもこうして一緒に過ごせる時間が増えたのであるのだけれど、の邪魔はしたくないので、読書をしている時は静かに隣に座っているだけの時間がある。かといって、は自分が耐えきれなくなった頃には読書を終えて、会話をしてくれるからその時間は少ない。しかし、その時間が少ないとは言え考える時間としてシリウスにとって十分な時間であって、マイナスな事ばかり頭の中に浮かんでしまう。
「(先輩にとっての俺って・・・何だろう。)」
つい最近、シリウスはいつものように友人と廊下を歩いていた。すると、目の前にがいたのだ。偶然会えたことが嬉しくて駆け寄ろうとしたら、彼の後ろから彼らと同じグリフィンドールの学生がに声をかけていた。別にやましいことをしているわけでもないのに、の顔に浮かんだ笑みに気付くと足を止め、その光景を隠れるようにして見てしまった。
自分以外に笑顔を見せる事なんて当たり前の事だ。頭では分かっているのに、心に何かが刺さるような感覚が走った。自分もその中の1人でしか思われていないような、そんな耐えきれない感覚。
こんな事ばかりを考えているからか、自分ばかりが先輩に行っているような気がしてならなくてぼそ、と呟いてしまう。
「先輩は俺のこと、好きなのかな。」
「シリウス?」
心の中で言ったつもりだったシリウスであったが、その言葉は一字一句余すことなくの耳にしっかり届いていた。から、言葉が返ってくると思っていなかったシリウスは自分を呼ぶ声に大きく反応してしまう。がばっと振り向くと、疑問符を浮かべてこちらを見ているの姿があった。(やってしまった・・・)
「シリウス、」
「っ、何、ですか。 (全部聞かれたのか?)」
やってしまった恥ずかしさからなのか、シリウスの頬は紅く染まっていて必死に何か言い訳を探そうと考えているのが目に見えて分かる。この前、ジェームズに訳の分からない事を言われたけれど、これでようやく理解した。どうやら、シリウスは自分ばかりが好きなのではないかと思っているらしい。(そんなこと、あるわけないのに。)
「シリウス、俺は君のことを好いているつもりだったのだけれど、」
「・・・・え?」
「伝わっていなかったのかな?」 そう言って、シリウスの頭に触れながら尋ねる。向かい側には目を丸くして驚いて頬をさらに紅くしてを見つめるシリウス。そんな彼の反応があまりにも可愛くて、頬を緩ませずにはいられなかった。は彼に向かって微笑みながら、腕を背中に持っていきシリウスの身体を抱き込んだ。
「せ、先輩っ!!何してん、ですか。」
「ん?いや、俺の君への愛情が伝わってないのだろうと思ってこうしているんだけれど。」
「駄目だったか?」 と少し残念そうに言ってみれば思いきり首を横に振ってくれるシリウス。抱きしめるだけでこうも紅くなってしまうシリウスだから、今まで自分に理性をかけて必死に控えめにしようと努力してきたのだが、かえってそれはシリウスの不安材料になってしまったらしい。
「君のためを思って俺はこうしてきたのに・・・」
「先輩?」
「もう少し積極的になっても良いと、シリウスが言ったのだからね。」
「前言撤回は受け付けないからね。」 疑問符を浮かべているシリウスに、顔を近づけて触れたかった彼の唇に自分のそれをそっと落とした。
「・・・・」
ぽかん、となっているシリウスを余所に、は本を手に持ち授業へ行く準備をする。「朝の挨拶はこれで良いのかな?」 なんて半分冗談で言われた言葉でようやくシリウスは我に返って顔を紅くしたままの名前を叫ぶ。けれど、はそれに笑顔で答えるだけで、唇を押さえたままのシリウスに 「愛しているよ、シリウス。」 とシリウスの耳元で囁いて微笑んで手を振ってそのまま授業のある教室へと足を向けた。どうやら彼の心配は杞憂だったようだ。
いたずらっぽく笑う声
前を行く先輩は、とても嬉しそうだった。
title by 確かに恋だった / いたずらっぽく笑う声