金曜日の昼食の後。

午後の授業の無いこの『金曜』という日は、彼等にとって絶好の機会である。

そんな時の中で、ホグワーツの城の中をバタバタを勢い良く走る音が駆け抜ける。
その音の発生源が通り抜ける廊下にいた生徒達は、さっと脇に避け、逃亡者の協力をしつつも、自分達の娯楽の提供者たる彼等を見守る。
さて、本日はどんな快楽が見られることやら、といったような心境で。

「ポッター!! ブラック!! 待てぇ!」

怒声を発しながら、逃亡者に大分遅れを取りつつも懸命に追いかけるのは、城の管理人―アポリオン・プリングルだった。
とは言っても、彼が彼等―悪戯仕掛人を捕えることなど3年生以降、まったくない。
学年でも上位の成績を誇る彼等に、実力勝負をすることがまず間違い、というのが、ホグワーツにいるほとんどの人物の認識だ。
だからと言って、正攻法以外で勝負しても、無残に敗れるのは、やっぱり必定なのだ。

そんな悪戯仕掛人の一員たるシリウス・ブラックとジェームズ・ポッターは、前を歩く2人の少女を目敏く見つけ、そのスピードを上げる。
そして、彼女等を手を掴んでは引っ張って行く。

、逃げるぞ。」
「えっ、ちょっと、シリウス!?」
「リリーもだよっ!」
「何よ、それ!?」

勿論、抗議したところで実行されているので意味はない。
彼女達は懸命にもそれを判断し、自分達の足で彼等のスピードに合わせて走る。
いろんな意味で優秀な少女達の名は、とリリー・エヴァンズ。
シリウスとジェームズの最愛の恋人である。



しばらく走り、辿りついた四階の吹き抜け。
下にはアポリオン・プリングルがぜぇぜぇと息を整えていた。
そのようすをしっかりと確認した、悪戯仕掛人達。
彼等は出現呪文で、何が詰まっているのか良く分からない土嚢を出す。
そして、手すりに土嚢を置いて、一気に口を空ける。

下に向かって一気に降り出したのは、真っ白な雪。
事前に仕掛けがしてあるのか、そこかしこに舞い散っては、城に雪化粧を施していく。

城の内装が真っ白に染まった。
一見、White X'masのような装いを見せたホグワーツ城に、観衆達は仕掛人を様々な形で褒め称えた。
少しばかり放置されたリリーとはひっそりとその場を抜けて、グリフィンドール塔に戻った。



「もう、本当に嫌になるわっ!」

2人が自室に入った後の、リリー・エヴァンズの第一声。
自他共に認める彼女の親友であるは、憤慨する彼女に紅茶を注いだカップを渡す。
自分もミルクをたっぷり注いだカップを持って、リリーの隣に腰掛ける。
彼女等はお互いの気持ちを分かっていた。
なにせ互いに『モテル人』をパートナーに持つのだから。

そう、あの場を離れたのは、彼女達の小さな嫉妬だ。
パートナーの彼等が悪戯を止められないのは頭の片隅で分かっている。
だから、何も言わない。故に、いつもの通りにふるまって過ごすのだ。

「でも、リリー。感動してたじゃない。珍しく。」
「不覚にも、ね。全く、私としてたことがやってしまったわ。」
「ふふ、私も人のことは言えないのだけど。」

クスクスと顔を見合わせて笑う。
そして、紅茶をすすった後、思い切り溜息をつく。

「それにしても。」
「そうね。不毛だとは分かっているんだけど、ね。」
「こればっかりは仕方ないっていうか。」
「本当に賛成。」
「「自分への納得の射せようがないっていうのが困るわ。」」

なんて、声をそろえて言う2人。
そんなころには、カップは空で、おかわりなんてある訳もなく。

「ねぇ、リリー。」
「なにかしら?」
「リーマスにはなにか上げた方がいいわよね、そろそろ。」
「そう言われれば、そうね。」

リーマスに泣きついているであろう自分の大切な人を思い浮かべながら、苦笑を洩らす。
めでたく相談相手に就任させられてしまった彼、

―シリウスやジェームズ曰く、

 『女心が分かって、なおかつ頼りになって、視野が広い人って言ったら、リーマス以外誰がいるっ!』

ということらしい。
ちなみにピーターは、役に立たないらしい。・・・・、哀れ、ピーター。―

リーマスは、甘味大王だから、お菓子の大量詰め合わせを上げれば何とかなるだろう。
彼女等は、やっぱり重苦しく溜息を吐きだすのだった。
なにせ彼用の激甘お菓子を作るのは大変な労力なのだから。



一方、シリウスやジェームズといえば、自分達の部屋にリーマスを招き入れていた。
リリーやの予想通り、正しく彼に相談を持ちかけていたのである。

「「リーマズ、ぎいでぐれ。」」
「また、かい? 2人とも良く厭きないよね。」

床で正座する2人とは対照的に、優雅に椅子に腰掛け、ココアの注がれたカップを傾けるリーマスだった。
彼は、2人から捧げられたチョコレートを1欠片、口に放りこむ。

「置いていかれるとは思わなかったんだよっ!」
「いつも連れて行って置いてかれている癖に?」

The・大魔王降臨。
リーマスの冷たい声音に、シリウスもジェームズも硬直する。

「「ゴ、ゴメンナサイ。」」

思わず、謝罪の言葉を口にしてしまう2人であった。
そんな2人に満足そうな表情を浮かべたリーマスは、やはり大魔王だろう。
けれど、その心根は優しい彼だ。

「お莫迦な2人にヒント。
 彼女達は、どんなに優秀だって『女の子』何だからね?
 この世に1人ので、リリー・エヴァンズなんだよ。」

ニッコリ笑って言うとカップを消して、部屋から出て行った。
残された2人はというと、腕を組んでもんもんとなにかを考えていた。



そして来る夕食の時間。
いつものように6人で1つのテーブルを占領していた。

、スコッチエッグいる?」
「あっ、欲しい!
 リリーは、サラダいる?」
「頂戴。」

なんて向かい合ってやり取りするものだから、放置状態のシリウスとジェームズは、それぞれに声をかけた。

「リリー、ミートパイ取って!!」
「目の前にあるんだから自分で取りなさいよっ!」
「そんなぁっ!」

リリーにいつものようにあっけなく地に沈まされた。
シリウスの方はというと、

、そこのチキン、2本取ってくんねぇ?」
「お皿、貸して?」
「ほらよ。」
「1本、オマケね?」
「サンキュー!!」

内心おびえながら言ってみたものの、取って欲しかったものは、自分の手には届かないモノで。
周りも見れないほどに緊張していた自分に嘆きつつ、食べたいと思っていたチキンが、自分から遠いことに感謝をした。
そのおかげで、作戦は成功した訳だから。
堪え切れない楽しそうな表情が、顔を彩っていることを知らない彼は、取ってもらったチキンにかぶりつく。

一種見せ付けられるようなその光景を目の当たりにしたジェームズは、席を立ちわめく。
勿論、シリウスを指さしながら。

「ずるいっ、ずるいぞ、シリウス!」
「てめぇ、わめくなっ。遠くて取れやしねぇんだから、仕方ねぇだろ!」

ガタンと揺れる机を必死で支えながら、シリウスは応戦する。
やはりというか、シリウスの援護をするのは、であって。

「シリウスの言うとおりだわ。
 私とリーマスの間に在るのに、立って取りに行く訳にもいかないでしょう?」
の言うとおりだわ。
 だいたいよそってほしいなら、もうちょっと遠い所の料理を指定するべきだったわね。」

の味方を常々から自称するリリーのこと、の味方であったことは間違いなく。
そして、ジェームズにとって何が一番効くのかといえば、それは勿論リリーの一挙一動な訳で。
そんなリリーが、を擁護(ジェームズのビジョンでいけば、シリウスの援護)をしたわけだから、ジェームズは再度撃沈した。
まるで、ぷすぷすと焦げたような音を発しながら、地に沈んでいるジェームズを足蹴にして、リーマスは言う。

「いつまでそうしているんだい? 見苦しいこと、この上ないんだけど。」
「リーマス、君、酷くないかい?」
「「「「(勇者だ、勇者が此処にいる。)」」」」

毒を吐くリーマスに対して、果敢に応じるジェームズ。
周辺の4人の心境は一致した。
リーマスの周りにはこんなにブリザートが吹き荒れているのに、立ち向かうだなんて、ジーザス!
といったところだった。

「何のことだい?」
「分からないのかい?」

やり取りを聞いていた4人にしてみれば、震えるばかりのこの応酬。
そろそろ精神的害悪に耐えられなくなりつつあるリリーは、その鉄拳を振るった。
三度、地と仲良くする羽目になったジェームズだった。

「全く莫迦なんだから。」

手を叩きながら、言うリリーであった。
その間にも、シリウスとは、食べ終わった食器をまとめて、席を離れる。

「リリー、私達、先戻るね?」
「レポートを片付けに図書室、でしょう?」
「うん。時間かかるから先に寝てて?」
「分かったわ。」

彼女達の言葉は、隠語が混じっている。
つまるところ、部屋のトレードで、どちらがどちらの部屋に行くのか、というのを示している。
今日は、どうやらがシリウス達の部屋に行くらしいが。

それはともかく。
シリウスに手を引かれて、大広間を後にするに手を振りながら、狂喜のあまりに飛びついてきたジェームズをはたきおとすリリーだった。



ずんずんと賑わう大広間を背に城を横切って、グリフィンドール塔へ向かう2人。

「シリウス、シリウス、ちょ、ちょっと早いっ!」
「えっ、あっ、わりぃッ!」

シリウスがの声によって、急停止する。
勢いよく歩いていた訳だから、当然バランスは崩れる。

「あっ!」
「おいっ!?」

がつまづくのは、最早必然で、彼女の小さな叫びに、シリウスはぱっと振り向いた。
そこはさすがに運動神経抜群なシリウス、をちゃんと抱きとめた。
抱きとめられたはというと、すぐに立ち上がる。

「わふっ。」
「大丈夫か!?」
「ありがと。大丈夫。」

彼女は、スカートから埃を払うと、シリウスと並ぶようにして歩き始めた。
勿論、彼の手を握って。
それに気づいたシリウスは、立ち止まる。
かくん、と立ち止まるシリウスに引っ張られたは、体制を整えてから振り返る。

「シリウス?」
「わりぃ。でも、・・・・・、いや、何でもねぇ。行くぞ。」
「変なシリウス。」

いきなり歩き出したシリウスに怪訝な顔をしながら、は大人しく彼に引っ張られていった。
少し前を歩く彼の顔は、右肩後ろに歩く彼女からは見えないが、少しあからんでいたのは言うまでもない。



「どうぞ、My Dear Peincess。」

男子寮のシリウス達の部屋の扉を開いて、を招き入れるシリウス。
悪戯仕掛人達の部屋故に、いかにもいろいろ散らばっています、的なイメージがあるが、その実そうでもない。
教科書やらローブやらは床に放っておかれているものの、悪戯道具等々は全くない。
彼等曰く、楽しんでもらうのに、ネタを明かしちゃったら面白くないだろう、ってことらしいが。

「お邪魔しまーす。」

招かれたは、小トランクを持って部屋に入り込む。
が入ったと同時に、シリウスは外を窺って誰もいないことを確認して顔を引っ込めた。

「なんか、飲むか?」
「んー、ココア。」
「お前も良くそんな甘いものを飲めんな。」
「シリウスが甘いものを苦手とし過ぎてるのよ。」
「あれは、もう、トラウマだ。食べたくねぇ。」
「はいはい。」

シリウスの甘いモノ苦手は、ホグワーツ入学以来、年々拍車をかけ、今では、お手製のほぼ無糖のお菓子しか食べない。
入学した時は、まだやジェームズ達と同様のレベルのお菓子も食べれたのだ。
だが、毎年毎年事ある行事(ハローウィンとかクリスマスとか、イースターとか)の度に大量に送られてくるお菓子。
その山の発する鼻を利かすからに甘そうな匂いにやられたのだった。
それは、確かに苦手になるよなー、と思いながら、毎年毎年尽きることのないお菓子の山の処理を手伝う達だった。

「で。だな。 その、あの、あのなー、」

話にひと段落して、新しい話に移り変わる。
そのはずだった。確かにそのはずだった。
だがシリウスは、見事に言葉に詰まった。
ベットに腰掛けたまま、向かいでいすに座りつつも唸り続ける彼に苦笑を洩らすだった。

「話がありそうだから、リリー達に頼んだのに、なんでそう詰まるかなー。」
「し、仕方ねぇだろっ!
 こちとら、恥ずかしいもんは恥ずかしいし、大事なことだから、言葉を選ぶって言うのが・・・」

段々声が小さくなって、ごにょごにょと呟くシリウス。
そんな彼に小さく笑いを零しながら。

「そんなに迷うくらいなら、いっそストレートに言って、っていつも言っているでしょう?」
「わーぁった。どもってもちゃんと聞いて、詰まっても止めるな。」
「O.K. 分かってるわ。」

2人は一切の行動を止めて、これからの話に集中する。

「あのな、悪戯は止められねぇんだ。
 誰かに褒めてもらうとか、称えてもらうとか、そういうつもりでやってんじゃねぇ。
 こういう言い方も難だが、俺達は自分達の可能性を探してる。
 褒められたら、称えてもらえたら、できる限り応えてぇ。
 いろんな意味で評価されてる、ってことだから。
 にはすげぇ苦しい思いさせるかも知れねぇ。
 でも、それは俺の本意とするとこじゃねぇ。
 それだけは分かってくれ。」
「・・・、知ってたの?」
「・・・、気付かない訳がねぇだろ?」

瞳をまんまるに広げて、驚くに対して、照れくさそうに頬を掻くシリウス。

「ん。ありがと。」
「でさ、その上で、、おまえの気持を聞かせて欲しい。」
「別にシリウス達の悪戯にどうこう言うつもりはなくて。
 でも、楽しそうにみんなの歓声を受けているシリウスは見たくなくて。
 いつも、逃げちゃうけど、本当は傍にいたい。

 傍に居たいよ。」

シリウスは、ポツリともたらされた言葉に、心が痛み、顔を伏せる。
そんな彼を目にしながら、は想いを声にする。

「だから、もう少し頑張るから、傍に置いてね?」
「あ、当たり前だ!」
「そうやって大事な所で照れて詰まるのは、やっぱりシリウスね。」
「うるせぇ!!」

普遍的日常生活と、君と、僕。

というわけで、なんと「蒼蓮緋逢」の影詠様から相互リンク記念夢というまた何とも素敵な夢をいただいてしまいましたっ!!
いやあもう、素敵すぎる夢をありがとうございます、ごちそうさまです!!(はふはふ) 個人的にこう悪戯仕掛け人、そしてリリーとみんなでわいわいとやっているのが大好きな人間でして、本当に影詠様の書かれたこの夢が素敵で素敵でっ!!リリーと主人公の仲の良さと言ったらもうっ!堪りませんでした、ありがとうございますっ。ああもう、何度読んでも顔がっ(止めて)

最後になりましたが、相互リンク、そして記念小説本当にありがとうございました!これからもよろしくしてやってくださると嬉しい限りでございます!