!」


「次はドイツにとんで!」


「スイスで目撃情報!」


ッ!!」




「おう……、分かった………」

















「あ、。仕事は済んだのかい?良かった。
これから丁度授業が始まるところだったんだ。教室にい――――、っちょ、!大丈夫!?っ!?」

















「リーマス!――――じゃない、ルーピン先生!父さんはっ!?」


「眠ってる。過労による意識喪失と栄養失調、貧血に過度な寝不足、だそうだ。
命に別状はない。安心しなさい」











リーマスの微笑みを見て全身から力が抜けた。
父さんが寝ているベッドの脇に腰が抜けたようにしゃがみ込んだ。
僕より遅くきたメル、ウランも僕と同じだった。
メルなんか、目いっぱいに涙を浮かべ、今にも泣き出しそうだった。
ウランはいつものポーカーフェイスを気取っているようだったが、心配気に歪んでいた。

父さんは眠っていた。
白いベッドの中で眠っていた。
父さんはその白さに負けないくらい白かった。
その白さは病的だった。
毎日毎日、ずっと働きづめで。
それなのにホグワーツの教師なんかを引き受けちゃって。
忙しさも辛さも倍になったくせして、弱音を僕らに吐いてくれない。

子どもとして。
こんなに悔しいことって、ない。












「フェルシー、メル、ウラン。わたしは授業に戻るよ」










気を遣ったのか、リーマスは出ていった。
医務室には変な沈黙が流れた。
メルは不安気に周りを見渡し、ウランはただじっと父さんを見ていた。











「ほんと……心配かけさせる親よねぇ…」











メルがポツリと洩らした。
ウランがその言葉に視線を上げて弱々しく笑った。








「しょうがないよ。僕らの父さんはそういう人だから。
僕らに、強いところしか見せたがらない、優しすぎる父親だし」









ウランの言葉を聞いて胸が痛くなった。
そうだ。父さんがこんなに頑張らなきゃいけないのは、僕らの所為だ。
母親がいない寂しさを感じさせないように、メルとウランが、血が繋がっていないことを意識しないように平等に接して。






「でも、」






言葉が勝手について出た。









「でも、父さんは自分のことを考えなさすぎだっ!」





メルが静かに微笑んだ。






「そうね。 でも、世界で一番最高な父親だわ」







「……ん、………うぉっ!?」







寝ていた父さんが飛び起きた。









「ここ、どこだっ?」


「医務室。、倒れたん――――」


「授業が!ヤバイ!今日こそは出なきゃ!」







あくせく準備をしだした父さんにむかっ腹が立った。
勢い良く立ち上がって、得意の右フックを繰り出した。

頬に見事にくらった父さんは吹っ飛んでいった。






「フェルシッ!?」


「いっ…た。フェルシー………?」











ウランもメルも父さんも。
目を丸くして僕を見上げていた。
父さんなんか、口を開け放してアホ面をしていた。









「今日ぐらい!一日くらい、ゆっくり寝てろよ!
ただでさえ、アンタ、忙しいのに!体だって不調なのに、仕事仕事って、バカじゃん!
仕事オタクか!今日は休め!」











ゼハゼハと息をした。
こんなに叫んだのはいつ以来だろう。
喉が痛い。ああ、もう。

全て、父さんの所為だ。










「………フェルシー、」


「…………………どれだけ、」


「うん?」


「どれだけ心配したと思ってるんだ、バカ親父!」






そう叫んで思いきり父さんに抱きついた。
父さんは最初こそ驚いたようだったけど、笑ったような雰囲気をだして抱きしめ
返してくれた。






「素直じゃないなぁ」


「父さんほどじゃないよ」


「そうだね。の天邪鬼っぷりは天下一品だ」


「それでいてカッコ可愛いんだからモテたでしょう、?」




メルがニコニコ笑いながら聞いた。






「………やっぱり女の子はそういう話、好きだよな」






父さんは苦笑いにも似た笑いを浮かべた。
そして、少し考える仕草をして、フワリと笑った。







「そうだな。ウランほどにはモテなかったな」


「え!? ウランってモテるの!?」









メルが目を見張った。
そして勢いよくウランを振り返り、肩をつかんで揺すった。








「アンタ、モテるのっ? 誰に告られた?」


「お、うえぇ……っ、も、モテてない……!」


「やめてあげなよ、メル」









僕が制止に入った。
ウランは目を回してベッドに突っ伏した。
ウランの黒髪がベッドに広がった。
ウランの黒い髪と父さんが寝ているベッドの白は酷く対称的だった。

うなだれるウランの頭を父さんが撫でた。







「ウランはシャイだからなー………。シリウスはシャイではなかったし…誰に似たんだろうな」


にさ」







ウランは顔に蒼白さを残しながら笑った。
父さんは驚いたようだったけど、すぐに顔を笑いに染めた。






「ああ、そうかもな」


「あ!ウラン、ズルい!ねぇ?。私だってに似てるわよね?」








ウランの頭をベッドに押し付けて、ズイと父さんの前に踊りでて言った。
父さんはそんなメルを見て小さく笑った。
メルの青い髪を静かに撫でて、そして、灰色の目を見つめた。






「そうだな………。メルの一生懸命なところが俺に似てるかもな」


「自分で言っちゃうの? ………でも、嬉しいっ!!」










メルは花を咲かせるように笑った。
その顔を見て父さんも笑った。






「父さん」






父さんを呼んだ。
別に、深い意味はない。
でも。






「うん? ……ハハッ!!フェルシー、そんな顔はするな。
お前だって俺に似てるし、自慢の息子だ!」









父さんは、綺麗に笑った。
嬉しかった。
父さんが、こんなに笑っているから。
あんなに絶望していた父さんが。
シリウスさんのことで気を病んでいた父さんが。
今、活き活きとしている。






「父さん」


「どうしたんだよ?フェルシー」


「…………僕、幸せだっ!!」






幼稚かもしれない。
それでも僕は父さんに思いきり抱きついた。

ある日の幸せな出来事

ホグワーツは夏を迎えようとしていた。
空は青くて、笑っているようにも見えた。