自分とシリウスしかいない静かな部屋の中で、自分の声がやけに大きく聞こえたように感じてしまう。それと同じ効果なのかは知らないが、重なった唇から漏れる彼の息も、自分の息も、身体の奥に響くような錯覚を覚えて、余計にの顔は赤くなった。
「( ジェームズのやつ、覚えてろよ・・・!)」
事の原因であろう、今まさに自分達が何をしているかを予想して笑っているに違いない彼の名前を罵るように吐き出した。当の本人は、感謝される覚えはあれど罵られる覚えはないね!なんて言いそうで、それにきっと言い返せない自分もいる事に、さらには言いようのない感情を覚えた。だって、彼らがこうでもしてくれなければ、自分はきっと、
「(・・・きっと、シリウスの想いを、聞けることはなかっただろう、けど、!)」
事の発端は、今日の昼。悪戯仕掛け人とがいつものように皆で悪戯を考えようと部屋に集まろうという話になった事から始まる。
***
ジェームズ達の寝室、そこがと悪戯仕掛け人の4人組がいつも悪戯を考えるための部屋だった。今日もジェームズの字で書かれた「考えるから、いつもの場所に!」なんて置き手紙を自分の部屋で見つけたから、はこうしてその部屋にきたというのに、
「・・・ジェームズ達、来ねえなあ。」
「 そ、そう、だな。・・・どうしたんだろう、ね。」
当の本人が約束の時間になっても来ていないとは、どういう事だろうか。いや、まだそれは良いとしよう。それなら待てば良いだけの話だ。隣に腰を掛けているその声に、は何とか言葉を返して、「(・・・けど、何で、)」 ソファの端っこに座りながら、脚の上に置いていた手で拳を作って握りしめる、
「( 何で、シリウスと2人きりで待たないといけない事になってるんだ・・・!)」
今にも喉から外に出そうなその声を必死には抑え込んだ。夢であってくれと何度も思い込もうとしたけれど、隣を相手に気付かれない程度にちらりと見やれば、真ん中辺りにどかっと足を組んで座っているシリウスの姿がある。そして拳を作っている手に爪が食い込んでいるからか、痛覚も神経に伝わってくる・・・もちろんこれは夢ではなかった。
「 、」
「え、な、なに?」
「・・・いや、ジェームズから置き手紙もらったんだろ?」
「う、うん、その、考えるから、いつもの場所にって、」
「・・・これ、その置き手紙、っ。」 呼ばれただけなのに、びくっと大きく身体を震わせてしまいながら、はシリウスへと言葉を返して、その置き手紙をシリウスに差し出した。その時、一瞬だけ、2人の手が触れる。すぐにその手を引っ込めてしまったは顔を伏せたままであったから、この時の彼の顔がどうなっていたかなんて、それからシリウスも伏せてしまっていたの顔に赤みが差していたことなんて、お互い知る由もない。そして、そんな反応の所為で、2人の間に今までずっと誤解があった事も、当の本人達は、
「・・・なあ、」
「っ、ええと、どうした?」
何を言われるのだろうか、と思わずは身構えてしまった。何か、自分がシリウスに嫌われるような事をしたのではないかと。やはりあの触れてしまった手がいけなかったのだろうか、一瞬で引っ込めたんだけど・・・なんて、が思っていれば、飛んできたその言葉は、
「・・・、俺のこと嫌いだろ。」
「・・・え、ええっ!?」
全く予想していなかったもので、思わず大きな声を出してしまった。どこで、どうそんな話に繋がったのか、には全く理解できなくて、驚きのあまりシリウスの方へと顔を勢いよく向ける。けれど、そこには何故だかひどく寂しそうな目をした彼の姿があって、ますますは混乱してしまった。そんな混乱した頭から、ちゃんとした言葉が出てくるはずもなく、の口から出てきたのは言葉足らずのそれで、
「な、なんで、?」
「何でって・・・お前の、俺に対する反応見てたら明らかだろ。」
「ジェームズ達といる時はすげえ楽しそうに笑うのに、俺と話す時は下向いてばっかで何か大人しいし・・・」 何故そんな話になったのか、という事をは訊きたかったのに、“何故嫌っていると分かったのか”という間違った解釈をシリウスはしてしまっているらしい。恥ずかしくて縮こまっていただけの自分の行動が、まさかそんな風に捉えられているとは思っていなかったは、慌ててそれを訂正しようと、自分の顔だけではなく、身体ごとシリウスの方へと向けた。
「ちっ、違う!」
「・・・何が違うんだよ。」
「シリウスといる時に大人しかったのは、その、!」
シリウスの事が好きで、恥ずかしかったから。 ・・・そう言えたら、どれだけ楽だろうか。けれどそんな事を言ってしまえば、シリウスとこうして会話をするどころか、目すらも合わせてくれなくなってしまうかも知れない。そんな可能性を捨てきれなくて、そう思ってしまうと怖くなって、その言葉は下を向いた顔と相俟って、喉から上へと出てはくれなかった。
「・・・別に無理して俺といてくれなくて、良いんだぞ?」
「俺だって、これ以上お前に嫌われたくないしな。」 言葉を出さなかった所為で、さらにシリウスの考えは間違った方へと加速する。嫌いだろ、と放って以来、伏せられたその顔がゆるりとの方へと向けられた。そんな言葉を紡いだその声音に、の視界に映るその顔に、今まで見たことのない、悲しそうな、それを必死に耐えているような笑みを浮かべていたから、 だから、思わずは、
「 違うんだっ!」
「っ! 、?」
目の前にあったその手を掴んで、自分が何を言ったか気付いた時には、もうほとんどを声に出してしまっていたのだ。
「君を、シリウスを嫌うわけないじゃんかっ!だって俺はっ、君のことが、すっ、!!」
「っ!!」
慌てて口を塞ぐようにして自分の手を思いっきりそこに当てる。俺は今、何を口走ろうとした?目の前には心底驚いたと言わんばかりの顔をしているシリウスがいて。そういえば、お互いの距離も何だか近くなっている。
「 ええと、その、」
気付かれたかも知れない、けれどまだ誤魔化しが効くかも知れない。そんな思いがのぐちゃぐちゃになっている脳内に入り込む。思わず握ってしまっていた手を解き、最初に座っていたソファの端っこへとは退いて、大きく息を吸い込む。
「 あの、とにかく、シリウスを嫌ってるなんて事はないから、」
「その、 そんな悲しそうな顔、 しないで、」 は今、自分に何を言おうとしたんだろう。いや、勝手な思い込みで、そう聞こえたのかも知れない・・・けれどシリウスは、それが思い込みではないかも知れないという確信を、もう少しで掴めそうだった。ひどく驚いて目を見開いてしまったけれど、自分の視界に、顔を真っ赤にさせて、顔を伏せようとしているの姿がしっかりと映し出されていたからだ。
「 、」
「っ、な、なに? 、シリウスっ、ちかっ、」
だから、シリウスは一種の賭けに出た。負けだと最初から諦めていたはずなのに、そこに光が差し込んできた気がしたのだ。これを逃したら、自分はきっと一生後悔する。シリウスは自分の座っていたその位置から、ゆっくりと縮こまっている彼の方へ近づいて、先程彼が自分にしてくれたように手をそっと握って、その名を呼んだ。
「俺のこと、嫌いじゃねえの?」
「だ、だからさっきからそう言ってるだろっ。」
「嫌いじゃなかったんなら、何で俺の前ではあんな態度だったんだ?」
「そ、それはっ、そのっ、」
「というか、顔がちかっ、」 自分が近づく度に、慌て具合がひどくなって、顔なんかはもう風邪で熱が出た時のように赤くて。けれど、繋がったその手に拒否の様子は見られず、近づく身体には一応形だけは片手で押し返すような事をしていたけれど、その手に込められた力は無いに等しくて。いつもなら、ジェームズ達と違う態度に落ち込んで、よく見る事もせず、自分も顔を反らせてしまっていたけれど、もしかして、自分が見る度に伏せられていた顔はいつもこんな色をしていたのだろうか。
「 教えてくれよ、。」
「っ、・・・でも、こんな事を言ったらきっと、シリウスは、もう俺とは、」
「嫌いになんかなるわけないだろ。」
「!!」
自惚れて、良いのだろうか。今度はが目を見開いて、俺の方へと視線をくれた。やっと、漸く、目を合わせてくれた。決定的な言葉はまだ聞けていない、けれど、の額に自分の額を当てても、拒まれることはなかった。が何を言おうとしているのか、まだ完全に分かった訳ではないけれど、でも、嫌いになるわけ無いじゃないか、だって、
「たぶん、俺も、と同じ気持ちだ。」
「、 え? シリ、ウス、?」
どちらの心臓の音か分からない高鳴りがシリウスには聞こえてきた。にもその音が聞こえていると良い。その音と一緒に、自分の想いも届けばいい。当てていた額を横にずらして、自分の腕をの背中へと伸ばして、思いっきり抱きしめた。嫌いになるわけ、ないだろ。 「 だって、の事を考えるだけで、」
「愛しく思えて、仕方がなくなるんだ。」
「なあ、だから、教えてくれ。」 何で、あんな態度をとったのか。さっき、俺に何を言おうとしてくれたのか。きっと自分の顔は緩みきっているに違いない。そう思いながら、シリウスは自分の背中に恐る恐るながらもしっかりと手を伸ばしてくれているの口元に、自分の耳を寄せていった。小さく紡がれた、ずっと聞けるはずがないと思っていたその言葉を聞くために。
***
「ふっ、 しっ、りうっ、 ちょ、待っ、」
重なっては、の停止する言葉で数秒だけ離れて、また重なって。息をする間もほとんど与えられないままようやく再度停止の声を何とかシリウスの耳に届ける事に成功する。息を整えようと大きく吸い込んで、吐き出す。その間すら、シリウスはから離れる気はないらしい。吸い込む時に自然と伸びた首筋に唇を寄せられてしまった。
「っ、 シリウスっ、」
そこに触れられてようやくは危機感を覚え始めて、シリウスの顔を両手で挟み込んだ。まさか、同じ気持ちだとは思っていなかったから、こうして抱きしめて、キスをしてくれるのは嬉しい。自分だって、できることなら今日ぐらいずっとこうしてシリウスと一緒にいられたら、と思ってはいた。思ってはいたが、
「・・・何だよ、今更何言っても俺は止めねえからな、」
「で、でもここっ、ジェームズ達も帰ってくるっ、」
口に出そうとする前に、シリウスに先を越されてしまい、慌てて次の言葉を紡いだ。すると、どうやら紡ぐ言葉を間違えたらしい。「・・・それなら、の部屋に行くか?」 1人部屋だろ?なんてシリウスは言うと、の身体を軽々と抱き上げてしまって、「わっ、!」
「し、シリウスっ、」
「・・・止められるなら、もうとっくにそうしてる。 けど、やっぱり無理なもんは無理だ。」
「 駄目だと諦めてた想いが通じたんだから、」 ひどく嬉しそうにそんな言葉を紡がれてしまえば、はもう何も言い返すことなんてできなくて。そんなの、自分だって同じだ、と言葉にして言いたいけれど、恥ずかしさが勝ってしまって、声となって出てくれない。だから、その代わりになるかどうかは、分からないけれど、はシリウスの首へと自分の腕をそっと伸ばした、 そうすれば、
「 俺も愛してる、。」
なんて弾んだ声でそう言って、自分の顔をの首元に擦り寄せたのだ。
今この場に必要なのは体温と唇だけ
・・・あーあ、やっとくっついたよ、あの2人! 長かったねえ。見てるこっちが耐えきれなくなるんだもん。 今度シリウスからお礼もらわないと! 僕はにお菓子作ってもらおうかな。 ・・・(2人とも、出歯亀してることには何も思わないのかな。)
requested by 蓮さま
え、ええと、まず始めに、え、えんらい長くなってしまって申し訳ありませんっ!細かくリクエストしてくださったので、あれも書きたいな、いやこれも加えたいな、と妄想が膨らみに膨らんでしまってっ・・・! そしてうっかりというリクエストでしたのに、そっちよりもくっつく話までがえらく長くなってしまって申し訳ないです。素敵なリクエストに舞い上がってまって、こんな感じになってしまいましたorz 愛だけは詰め込みに詰め込んだのですが、す、少しでも楽しんでいただけましたらこれ幸いでございますっ!素敵なリクエストをありがとうございました!そして乱文長文で読みづらくなってしまって申し訳ありませんでしたっ。
え、ええと、まず始めに、え、えんらい長くなってしまって申し訳ありませんっ!細かくリクエストしてくださったので、あれも書きたいな、いやこれも加えたいな、と妄想が膨らみに膨らんでしまってっ・・・! そしてうっかりというリクエストでしたのに、そっちよりもくっつく話までがえらく長くなってしまって申し訳ないです。素敵なリクエストに舞い上がってまって、こんな感じになってしまいましたorz 愛だけは詰め込みに詰め込んだのですが、す、少しでも楽しんでいただけましたらこれ幸いでございますっ!素敵なリクエストをありがとうございました!そして乱文長文で読みづらくなってしまって申し訳ありませんでしたっ。
title by Lump / 今この場に必要なのは体温と唇だけ(Middle)