「ふふ、おかえり、シリウス。」
「っ、ああ、ただいま!」
どたばたと玄関まで迎えに行かないうちにダイニングへと駆けてくるシリウスへとそういつものように言葉を返せば、元気な声で彼も返答してくれる。もうちょっと、待ってね。今作ってるから。 そう言って夕食の準備で手を動かしながらシリウスへと視線を移せば、視界に入ったのはシリウスだけではなく、彼に抱えられた白とピンクがたくさん詰まっている花束であって。
「どうしたの、それ?」
「早く家に帰りたかったから、近道してたらそこに花屋があってな!」
「つい寄ってみたくなって。」 そう言ってその花を見ながら質問に答えるシリウス。その花が綺麗だったから、思わず準備をしている手を止めてタオルでその手を拭いて花束を抱えている彼の方へと歩を進めてしまう。つい寄ってみたくなって、それで彼が花束を買ったのだろうか?商売につられて買う人ではないと思っていたのだけれど、それに近道をしたということは彼の事だから裏道を通ったに違いない。そんな裏道に活気のある店屋なんて早々ないだろうから商売につられて、なんて可能性も無いに等しい。そんな事を考えていたのだけれど、花を見れば見るほどそんな事はどうでも良くなってしまって、
「 綺麗な花束ね。」
「本当かっ?」
「こんな事に嘘なんかつかないわ、本当に綺麗な花束・・・」
シリウスからその花束を受け取って思わず笑みを浮かべながら、その花束に魅入ってしまう。こんな花を売っている所なんてあったかしら、なんて思ったからシリウスにどこの裏道を通ったのか訊こうと彼の方へと顔を上げれば、そこにいた彼は少しだけ顔に赤みを帯びていて。どうしたの、シリウス? なんて花束を抱えたままで彼の顔をのぞき込めば、ようやく彼は喉を震わせてくれて。「あ、あのな!」
「に、似合いそうな花だと思って、な。」
「それで、の笑顔を思ったら、いつの間にかそれを買ってて・・・」 なんて小さな声で細々と私にそう話してくれるシリウス。何を咎められると思っているのだろうかと思われるその小さな声はそれでも私の耳にはしっかりと響いてきていて。もちろん、そんな愛しい事を、その愛しい人から言われて嬉しくないはずが無くて。(まったく、本当に、)
「ふふ、シリウス。」
「な、何だ?」
「ありがとう、すごく嬉しいわ。」
「っ!!」
緩みきっている顔を押さえられないままに彼の方を向いてそうお礼の言葉を述べれば、一瞬目を見開いて驚いていた彼もへにゃりと笑みを浮かべて嬉しそうな顔をしてくれて。犬の姿なら尻尾を振っているんだろうな、なんて事を思いながら視線を外さないままに彼を見ていれば、「 、」なんて私の名前を呼びながら、花束ごと私へと抱きついてくるシリウスの姿で視界がいっぱいになって。
「シリウス、花束が台無しになってしまうわ。せっかく貴方が買ってきてくれたのに。」
「・・・、もうちょっとだけ。」
「ふふ、もうシリウスったら。」
それでも花束を潰さないように配慮はしてくれているみたいで、いつもなら空気さえ入り込む間がないくらいにひっついてくるのに、今は花束の空間だけは確保して抱きついてくれて。肩へと顔を埋めているシリウスに、そんな言葉をかけていれば、彼はぽつぽつと言葉を紡ぎ出して
「の喜ぶ顔が見たくて、これを買ったら急いで帰ってきた。」
「ふふ、魔法を使ったんじゃないでしょうね?」
「・・・使おうとも考えたけど、が怒ると思って止めたんだ。」
「せっかくの笑う顔が見られるかもしれないのに、自分から台無しにするなんて事をしたくなかったから。」 その言葉だけでも、私が嬉しいと感じていることを彼は気付いているのだろうか。花屋に行ってそんな事を思ってこの花束を買ってくれているシリウスを考えるだけで私の心は溢れんばかりに満たされているという事に、彼は、
「がこうして嬉しそうな顔を、笑ってる顔を見たら・・・」
「俺、本当に嬉しくって。」 目の前にある柔らかい髪の毛に指を絡めてそんな彼の言葉を聞いて、私の心の中はもう溢れていってしまって。家へと駆けだして、それでも大事そうに花束を抱えている彼の姿を思うだけで、もうすでに緩みきっているはずの私の顔はさらに崩れていくように笑みを浮かべてしまっていて、溢れ出るそれを抑えきれなくて
「 シリウス、」
「?」
「ありがとう、」
「っ、ああ!!」
そう言って嬉しそうな顔をするシリウスのその唇へと、そっと自分のそれを重ねてしまうのだ。
溢れんばかりの、その愛を
目を細めて幸せそうに笑った彼は、私の唇へと自分のそれを重ねてくれた
素敵なリクエストをありがとうございました!
requested by 匿名様
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